雌
どうして、女子は集団をつくると、その中で仲間外れを作らないと気がすまないのかしら。
私はグループの中からそんなことをおもった。
みんなが普通に仲がよければそれでいいじゃない。
どうして、18にもなってイジメみたいなマネをしているのだろう、私達は。
- 1 -
人の不備を見つけてはその人間を見下す。
いや、誰かを見下したいがために 人の不備を探すのだ。
自分は他人とは違って特別なんだって思いたいのだ。
誰かの不備を嘲笑うのは、自分はこんな不出来な人間なんかじゃないと思いたいのだ。
そう。私も結局 そういう汚い人間なの。
だけど。今、目の前でいじめられている彼女を救いたいと思ってしまった。
自分の中の矛盾に困惑。さてどうしよう。
- 2 -
今日も彼女は虐められる。
救いたい、もうその気持ちは否定出来なくなっていた。
でもさ……
今もグループにいるようで居ない彼女。
話の輪に混ざれずに黙っている。
肩にかかる位の長めの髪が
彼女の顔を、表情を、隠してしまって盗み見る事が出来ない。
前に見た彼女の目は不思議な色を灯していた。
濁った強い光というか、……表現し難い。
あんな光を持った、
彼女と少し話をしてみたくなった。
- 3 -
そんなある日の朝、私はたまたま通学路で彼女を見かけた。
運よく、周りには誰もいない。私はチャンスとばかりに、彼女に声をかけた。
「おはよ〜」
「…」
彼女はこちらを見向きもしない。
でも私は諦めなかった。
「いつもこのぐらいの時間に来るんだ〜。私も丁度この位かな。何処住んでるの?私はね〜…」
「…私に近づくと、貴方も虐められるわよ」
彼女は正面を向いたままそう言うと、そのまま去ってしまった。
- 4 -
そう言われるかもしれないと思った。
それでも私は諦めない。
周りにどう思われようと、私は私が決めた道を進むだけ。
移動教室のあと、彼女が1人の隙を見てまた声をかけてみた。
「ねえ、さっき先生に頼まれた仕事があるんだけどさ、ちょっと手伝ってくれない?」
「さっきから急になんのつもり?」
と冷たく返されてしまう。
そうか、急すぎたかもしれない。
自分でも怪しいと思う。
次はどうしよう。
- 5 -
昼休みになり、グループの皆で丸く輪になりお弁当を食べる。彼女も気まずそうに端のほうに座っている。
「今日は嵐が…」
「タレントのナントカが…」
彼女を虐める主要メンバーは既にお喋りに興じていた。
私はさりげなく彼女の隣に座った。彼女は驚いたような顔をして私を見上げる。
「隣、座っていいかな?」
「………勝手にすれば…」
思いっきり警戒されているようだ。大丈夫、私はあなたの味方だから。
- 6 -
「一人で寂しそうな人と仲良くしてあげる私ってスゴイとか、そういうこと?」
鋭い目線で、毒舌を放ってはいるけれど、彼女の頬が少しだけ色づいているのを私は見つけてしまった。
「ひどいじゃない。そういう見透かした態度はよくないよ」
「じゃあ、図星なんだね」
「図星ならばこんなことはしない。桜井さんもっと人に気を使うことのできる人だと思ってたのに」
「落胆すればいいよ」
彼女はご飯を箸で摘む。
- 7 -
「ふーん。じゃあそんな桜井さんに問題。友達とはなんでしょう?」
私は、彼女の濁った目を見てそう言った。
「あなた、なに考えているの?」
「別に、ただの質問。」
「……一緒に話して、笑うとか、そういうものでしょう?」
「ざーんねん。不正解。応えはね…お互いが認め合うことができる人のことをいうんだよ?わかった?」
「さっきから、なにを言っているの?意味わかんないわ。」
彼女は、訝しげにそう言った。
- 8 -
「私も友達なんていないんだ」
桜井さんの傷んだ髪やその下のぬるりとした目を盗み見た。
悲しみや苦労でくすんだ肌は彼女の若さを奪っていた。
「そんなこと言ったら友達がいなくなるわよ」
「あんなの友達じゃない。桜井さんは私を信用してないね、こうしたら信じてくれる?」
彼女を虐めていた主犯格の女の頭に飲みかけのコーラをかけた。
時間が止まった。
さぁ、これからどうしようか?
- 完 -
作品情報
雌
#3407
- リレー期間
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10ヶ月