ヒャッッッッッッホゥゥゥゥゥゥゥ! 謹賀新年んんんんんんんんん!!! あけましておめでとうございます。
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イかれてる。完全にイかれてる。 新年早々どうしたんだ?はっちゃけ過ぎだろ。 この年賀状が他の人からのなら流せたかもしれない。 だが、この頭のネジが一つ二つ吹き飛んだ年賀状を送ってきたのは、超真面目で現在マサチューセッツ工科大に通うの兄貴なのだ。 あり得ない。一体何があったっていうんだ? 心配になった俺は、単身アメリカへ渡ることにした。
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しかしだ。アメリカに渡ると言ってみたはいいものの、俺には問題がひとつあった。 飛行機が、怖いのである。 なら船は?と思うかもしれないが、残念なことに、俺は船酔いがすごい。スワンボートでさえ無理なのだ。そんな俺が、アメリカまで太平洋横断なんてできるわけがない。 俺は頭を抱えた。兄貴の安否がものすごく気になる…しかし、こればかりはどうしようもない。 そのときだ。俺はひらめいた。 電話だ。
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なんてすごい世界なんだ! 俺は途方もない事実に気がつき、勘極まって鼻のすじをつまむ。 日本からアメリカまではうん千キロ。 32.195キロを三十本かける何回なんだ! 俺には到底無縁なその距離をひょいと電波は飛び超えてしまう。 こんなすばらしい文明の力を使わずしてなんとしよう。 早速俺は携帯電話をぱかりと開けた。がその画面は真っ黒。 そういえば…この間落として壊れたことに思いいたり、俺は愕然とした。
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そうだ、友達に携帯を借りればいいんだ! 電源を入れ…… ってだから! その連絡手段がないんだってば! そうか!公衆電話だ! 俺は自宅を飛び出し、家の近くにある公衆電話に飛び入ると、十円玉を入れた。 しまった……。 電話番号が分からない…携帯なら連絡帳に書いてあるのに…! 俺は受話器を下ろし、返金ボタンを押した。 しかし、金は戻ってこない。 ……壊れている…だと?!
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こんな時は、パソコンだ! Skypeで、安否の確認、声が聞ければいい! パソコンを開いて、電源を入れる。 まずは、IDだ‥。 繋がるかな‥。 どうか無事でありますように‥。 Skypeは、何故か、以降に繋がらない‥。 兄貴どうしちまったんだ‥!
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落ち着け、まずは落ち着くんだ。 何かあったというわけじゃない。ただイかれた手紙が届いたというだけだ。 ん?下の方に小さく何か書いてあるぞ? えーと……彼女ができました……。 くそっ、わざわざ自慢してきやがって! 衝動的に手紙を破り捨てる手を必死に止める。 ん?まだ何か書いてあるぞ? 明日のご飯は塩です……。 いやいやいや、ちょっと待てよ。 塩はご飯じゃねーだろ!?
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俺は頭を抱えた。 よし、深呼吸だ、深呼吸。 電話はダメ、パソコンもダメ、直接会いに行くのもダメときた。 しかし、どうにかして安否を確認しないと! こうなったら、アレしかない…と俺は思った。 そう、手紙だ。 ちょいとばかり時間はかかる。が、手紙に手紙を送り返すのだから、変なことじゃあるまい。 俺は震える手でペンを走らせた。 『ヒィッッッッッハァァァァ!兄貴ィイイイイイイ!! 元気ですか?』
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続きは…… 何があったか確かめないと。 なんと切り出せば良いか…… やはりこっちも近況は報せるべきか。 しかし兄貴の様なハッピーな報告は 俺にはなかった。 『実は俺も彼女出来たぜヒャハアア☆』 悔しいから嘘を吐いた。 帰省のため帰国した兄貴に会って 分かったが、あのハイテンションは ただ兄貴がアメリカナイズされただけだった。 我が家は平和な正月を過ごした。 彼女の件はお互い嘘だった。
- 完 -