今宵あなたを奪いに伺います。 ぶっは!!!!! くっそくっさい予告状を受け、私は笑い転げた。 この間三人の帝を追い返した矢先にこれだ。笑が込み上げてしかたない。 「かぐやよ、そろそろ月に帰らないのかい?」 おどおどした口調で婆さんが言う。 「予定変更よ。おもしろいじゃない。こんな予告状」 こんなおもしろい事がおきてるのに、みすみす月に帰ってたまるもんですか!
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でもどうやって私を奪いにくるのかしら? 1人目の帝は剣を持った兵隊が千人ほどいたけど、私の力で全員ぶっとばしたし2人目の帝は銃を持った兵隊を二千人くらい連れてきたけど私にとって銃の玉なんてポップコーンくらいの感覚だし、、、 次はどんな大群でくるのかしら! ガタガタガタッ! きた! ん?1人?それも武器もなにも持ってないじゃない!
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「こんにちは。かぐやさん、噂の通りお美しい」 ぷぷ…当たり前のことを言わないで欲しいわ 「この予告状はあなたが書いたの?」 「はい」 ふー。 どーやって私に勝つんだろ…まぁ無理だわな。うん、帰ろ。 「ちょ、ちょっと待ってよ。」 「え、あなた一人で何ができるっていうの?」 「あなたをおとしにきた。」 …おとすってまさか…。 私を惚れさせるってことー? ギャハハハハ…爆笑。 んじゃ、さよーなら。
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はあ、やっぱり無理だよなぁ〜 なんでこんなこと書いちゃったんだろ、俺 千人ぶっとばすだ?むりむりむりむり 俺1人だし、武器とか何も持ってないし いやーでも可愛かったなあ、あんな綺麗な人だったら死んでもいいや… ってなに思ってんの自分!しっかりしろよ! とりあえずあれだよな、褒めよう。褒めるところはたくさんある褒めたら落ちる!!頑張れ俺! 「かぐや姫、、
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あなたはなんてお美しい!」 「その言葉耳にタコができるほど聞いてるんですけど。」 かぐや姫はあくびをしながら即答した。 「かぐや姫…あなたほど清らかな心を持っている方は見たことがありません!」 「嘘つかないでよ。どうせあんたも面食いなんでしょ?」 かぐや姫は冷めた目でこっちを見る。 「かぐや姫、私と契りを交わしてください!」 「結婚のこと?…私の願いを叶えられたら、考えてあげるよ。」
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「俺にできることなら、なんでも叶えます!」 「じゃあ、おとして」 「え?」 落とすって何を? 「あんたが最初に言ったんでしょ? このかぐや姫をおとすって」 あ、恋の方か…って、恋におとす!? この麗しいかぐや姫を、こんな金も地位もないフツメンの俺に? 「いや、確かに言ったけど…!」 「じゃあ決まり! まぁ頑張りなさい」 無駄だと思うけど。 かぐや姫は笑って付け足した。
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「1号、髪を梳いて」 「1号、お茶」 「1号、暑い」 その日から俺は見目麗しいかぐや姫に召使いのごとくこき使われた。 1号という呼び名は、奴隷1号という意味らしい。召使いでさえなかった。 やめてやる!と何度も思ったけど、惚れた弱みか、有難うと微笑まれるとやはりかぐや姫が好きだと思うのだ。 そんなこんなで半月が経ち、満月の宵が巡ってきた。 その日、かぐや姫はいつもと違い儚げに見えた。
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「どうしたのですか?」 私が聞くと、かぐやは振り向いた。 かぐやというのは俺が勝手に呼ばせていただいている。 「なんでもないわ。」 そうして彼女は笑った。 悲しそうに。悲しそうに。 それでも綺麗で、見とれてしまった。 ああ、俺はこの人に、恋してるんだな、と、改めて思った。 彼女は、俺のお節介に決して嫌とは言わなかった。 たまに何かしたそうになった俺に、彼女は仕事をさせてくれた。 彼女は優しい。
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その優しさで俺の心は宙にも浮く思いだが、きっとそんな気持ちを伝えたらまた鼻で笑われる。 ん?本当に浮いていないか? かぐや姫の方が。 かぐや姫は浮いた体に驚くことなく、俺に袖振る……ように見えた。 「かぐやッ!」 俺は咄嗟に地を蹴りかぐや姫を宙で抱きしめる。 するとプツッと何かが切れた音が聞こえたのと同時に俺の背中が地に叩かれた。 何がおかしいのか胸の中にいるかぐや姫は笑う。 「おちたわ。」
- 完 -