白黒つけてよ、カフェ・オ・レ?

私はカフェでコーヒーを飲んでる。 テーブルの向かいには大好きな人がいる。 同じサークルの藤川先輩。 ずっと片思いで遠くから見てるだけだったけど、今日思い切って「お話があります」って声をかけてみた。 そしたら立ち話もなんだからってカフェに誘われたけど、正直先輩に声をかけることで頭が一杯になって何を話すか考えてなかった。 何を話したらいいんだろう? まさか何の用事もありませんって言えないよね。

nyanya

10年前

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「で、どうしたの?」 「はい?」 「だから、話あるんだろ?原から話し掛けてくるなんて珍しいし、何か大事な話?」 大事な話なんて、そんなこと言われると余計何も言えなくなる。このまま黙ってるわけにもいかないし、どうしよう…。 「えっと、あのですね」 声震えちゃってるし。 先輩はじっと私の様子を窺っている。 落ち着け、私。 考えてみれば、先輩と二人でカフェなんて嬉し過ぎるシチュエーションじゃないの!

TAKANA

10年前

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何か、何か言わなければ! 「そ、その、先輩にどうしてもお尋ねしたいことがありまして」 「うん、なに?」 落ち着こうとすればするほど焦ってしまう。何も聞きたいことなんてないのに、どうしよう。どうしよう、どうしよう……! 「せ、せせ、先輩はカフェオレ好きですか?」 「えっ?」 咄嗟に出て来た言葉に先輩は一瞬キョトンとした。しかし、すぐにおかしそうに笑う。 「なんだよ、そんなことか。うん、大好きだ」

kam

10年前

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「でもなんで?そんなこと聞きにきたの?」 先輩は私をみてクスクスと笑った。 先輩カフェオレ好きなんだ……って、そんなこと考えてる場合じゃないし! 「え、あ…いや……そ、そうなんです!先輩の好みの飲み物が知りたくて!!先輩ってカフェオレ好きなんですね!」 「……へぇ?俺の好きな飲み物ねぇ…」 とっさに口からでた嘘に先輩は気づいてる。 私が慌てる様子を眺めて先輩はまたクスクスと笑った。

onogata

9年前

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「あ、もしかして、サークルのメンバーのデータ集めか? 買出しに備えて」 不意に、からかうような口ぶりで先輩が言い出した。 確かに、皆が集まるときに飲み物を買ってくるのは、私たち一年生の役目だ。いつも適当に買い揃えるわけだけど……。 「そ、そうなんですよ!どうせなら、好みのもの飲める方がいいかなって……」 流れで、つい答えちゃう私。 「なら、これからは俺の分はカフェオレな。原が忘れずに買えよ」

misato

9年前

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なんという事だ。 これから先輩のカフェオレを買えるだなんて。 しかも先輩からのご指名で! 「は、はい!絶対に買いますね!」 「はは、頼もしいな。原の好きな飲み物ってなんだ?」 え?なんで先輩が私に質問してきてるの? 「私のですか?」 「そうだよ」 私の頭の中にはハテナが大量発生していた。 「別に深い意味はないよ。俺の単なる興味だし」 よかった。 私は深く考えすぎなんだ。

林檎飴

7年前

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「えっとですね、私が好きなのは………」 しかしそう簡単には落ち着けなかった。 咄嗟に先輩の前にあるカップに目がいく。 「カフェオレです!」 ……あ、しまった。 これでは明らかに私がウソをついたようにしか見えないだろう。 「へー、じゃあ俺と一緒だ。偶然だな」 しかし先輩はそう言ってニッコリと笑ってみせた。 いつも遠くから眺めているだけだった先輩の無邪気な笑顔が、今は私だけに向けられている。

key

6年前

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幸せだ。 しあわせだしあわせだしあわせだ! 仮に、『幸せ決定戦』みたいな大会があれば今間違いなく優勝する自信がある。 それくらいに先輩の笑顔は甘い。カフェオレよりも。 「大変だ……」 あまりの嬉しさに自然と心の声が漏れてしまっていた。しかもそれが先輩にも聞こえていたみたいで。 「何が?」 私は何も考えずただただ多幸感に浸っていた。 「好きすぎて」 ……何言った私今。

美衣

6年前

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「俺もだよ、カフェオレの事でしょ?」 そう言って先輩はまたニコニコ笑う。駄目だ、完全にバレてる。でも知ってる上でからかってくるって事はもしかして…… すいません、と店員を呼んだ先輩はカフェオレのおかわりを頼んでいる。 「あ、あの!私にもカフェオレください」 焦って言った私に先輩は少し驚いたようだったが、また元の笑顔に戻って私の分も追加してくれた。 告白しよう、カフェオレが来たら。

- 完 -