つまらんならやり直せ!

「あなたの死亡理由は?」 「世の中のつまらなさに自殺しました」

仏もどき

12年前

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「それが、理由ですか?」 「、、、はい つまらない事だと思いましたか?」 「はい」 「貴方には、そう取れるかも、しれません」 「今、目をつぶってください」 「、、、は?」

渡辺 倭

12年前

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「とーぅ!」 いきなりチョップされた。わけわからず頭をおさえる俺を天使は見下したように笑った。 「はっはーん。生き返らせてくれるとでも思いましたぁ? 生きてる世界見せてくれるとでも思いましたぁ?」 何だか無性にイラついた。 「別に」 さっきまでの厳かな雰囲気だった天使は、突然豹変したのだ。 「でも、貴方に会わせたい人がいるので会わせてあげます」 「会わせたい人?」 「人、と言ってももう死んでます」

天野そら

12年前

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そう言うと、天使はニヤニヤしながら、ついて来いと合図をした。わけもわからずついて行くのには、少し抵抗があったが、「会わせたい死人」とは一体誰なんだろうか? 想像すればするほどわからなくなる。 「着いたよぅ‼このトビラの向こうさ。開ける準備はいいかぁい?」 禍々しいトビラが目の前にそびえ立つ。こんな不気味なトビラの向こう側にいるのは、ただ者ではないだろ。にしても、この天使の話し方はムカつくぜ。

Robbie

12年前

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むかつく天使だが、それよりもこの扉の向こうが気になる。 俺は意を決して扉を開いてみた。 「あれ、誰もいない?」 「...外出中か困ったな〜♪」 期待させておいて、なんだこの始末は。 「あの人出かけるとなかなか戻ってこないし。そうだ、探しておいでよー。」 なんだこの天使は。 一体俺に誰を探せって言うのだろうか。

mainannn

12年前

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誰を探せばいいか分からず、俺は、扉の周りをウロウロしていた。 すると、ある大男に、出会った。 その大男は、俺に、こう言った。 「なにをしている!」 俺が、事情を説明すると、その大男は、 「なるほど」 「なるほど」 「天使に言われて来たのか?まあ、中に入れ」 と、言って中に入れてくれた。

miko

12年前

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部屋の中央には泉があった。泉は余りにも透明で、小さな魚が数匹泳いでいなければ、そこに水が存在することさえ気づかないほどだった。 「俺はこれでも仏様でな。一部には閻魔大王と呼ぶ者もいるが」と大男が言って笑った。 「お前さん、世の中がつまらなくて死んだと言うたな。俺は仏になってから度々、この泉を通して下界を覗いておるが、これほど面白いもんはありゃせん。映画やテレビやネットなんかとは比べもんにならんぞ」

fly

12年前

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「そうかな?」 そう呟いた俺の声に大男は視線を向けた。 「あれは人間が作り出したただの欲の塊でしかない。」 大男は黙って俺の言葉耳を傾ける。 「だってそうだろう?一人一人が日々のストレスや悩みを発散できる娯楽設備の数々。そういえば聞こえはいいかもしれない。でも結局は自己満足するためのオモチャだ。 明るい世界の裏で何が起きていると思う? オモチャの奪い合いさ。あんただってその泉からみてだんだろ?」

jhon

12年前

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「ふん、つまらんな」 大男は僕の話をひとしきり聞いた後にそう言った。 「今まで聞いた話の中でお前の話が一番つまらんわ」 「…悪かったですね」 「ここまでつまらん思考の持ち主だと怒りを通り越して可哀想に思えてきた。いっぺん人生やり直してこい。ほら。」 「うおっ!?」 大男に背中わ押されて、俺は泉にダイブしてしまった。 「…あれは面白かったなぁ」 俺は時々、この体験を思い出して生きている。

minami

12年前

- 完 -