夢の国のアリス

ここは夢の国。 ふわふわのクマさんもいるし、綺麗なドレスを着たお姫様もいるよ。 夢の国だったら良いなぁ。

yuna

12年前

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まうえを見上げてごらん。ほら、とんでもなく青い空に、たくさんの虹が架かってる。紅い薔薇の花びらが雨のように降り、光色の鳥たちが羽ばたく。この世界は、毎日、世界一いい天気。 淡い金色の草原を走り抜けた先に城がある。ノートルダム大聖堂にも似たゴシック建築の巨大な城だ。十二時九十分ちょうど、城の隣にそびえる背の高い塔のてっぺんで、誰も触らないのに鐘が鳴る。城に住むオバケたちは薔薇掃除に大忙しだ。

Jiike

12年前

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迷子の女の子は、白いワンピースをひらひらと風に舞わせて、お城へと辿り着いた。可愛らしい緑の瞳美しい黒髪。 門番の、鎧だけの兵隊は、女の子を城の中へ案内する。かしゃんかしゃんと、門番の銀色の鎧は音を立てる。赤い廊下の絨毯は、女の子の靴を柔らかく埋める。 さあ、お姫様がティーパーティーを開いているようだ。女の子は中庭の会場へ走って行く。おや、あの金髪のお姉さんがお姫様だね。

千年紀

12年前

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なんて可愛いらしいのだろう 薄桃色のふわふわとしたドレスをまとい、綺麗な青い目をしている。 女の子は、まるで宝石でも見るようにうっとりとお姫様を眺めていた。 不意にお姫様と目があってしまい女の子は、ほっぺたが赤くなってゆくのが分かった お姫様は、女の子を見てにっこりと微笑んでいた。

めんま

12年前

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お姫様は女の子の元へ駆け寄った。女の子はすっかり見惚れてしまって動けない。ぼんやりとしている女の子の両手を、お姫様が掬い取る。 お茶を楽しむたくさんの大人たちの間を抜けて、お姫様と女の子は中庭の真ん中へと躍り出た。そこに設えられたテーブルには、お姫様専用のティーセット。お姫様は女の子を椅子に座らせて、白いティーカップに素敵なお茶を注いでくれた。 ポットから流れ出すお茶はきらきらと輝いてとても綺麗!

miz.

11年前

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それはブルーローズティー。お姫様の瞳の色に因んで選ばれた幻の青い薔薇の香りが、辺りに甘く広がる。 まるで酔ったような心地になる女の子に前に置かれるは、月の雫のスフレ。熱々ふわふわのそれに添えられたアンゼリカは、女の子の目と同じ深い緑。 お姫様がにっこり笑う。女の子もはにかみながら微笑み返す。 さあ、準備は整った。誰もが溜息を漏らすほど、甘いお茶会の始まり始まり。

misato

10年前

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お姫様は女の子が別の国からやってきたことを知っていた。いつもお城の中にいるお姫様は女の子の世界に興味津々で、どんな小さなことでも聞きたがった。 月の雫のスフレを食べていると、幸せな気分になって、女の子もついついお喋りになってしまう。 紅茶を飲み干してしまったと思えば、知らない間にお代わりが注ぎ足されている。壁掛けのタペストリーに描かれている、黄色い薔薇の執事が「どうぞ」と、にっこり微笑んだ。

aoto

10年前

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幸せな時間が過ぎて、空の虹が紺碧の中に沈む頃、女の子の髪に降った最後の薔薇をお姫様はそっと取り去った。 「お茶会は楽しんでいただけたかしら」 女の子は何度も頷いた。では、とお姫様はカップを置き、鎧の兵隊に合図した。兵隊が空から垂れるタッセルを引くと、ぶわり、と黒々とした夜の幕が落ちた。 「お帰りなさい、小さなお友達さん」 そんな、とためらう女の子に、お姫様は言った。 「ここは本当に夢の国かしら」

まーの

10年前

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闇の中には女の子とお姫様の2人きり。闇はお姫様の金髪を輝かせ、女の子の緑の瞳を揺らす。 「私達はお互い、憧れを抱いただけなのよ」 お姫様は女の子を諭すように呟いた。女の子はちがう、と言いたかったのに言葉が出なかった。 「現実も、おとぎの国も、変わらないわ」 女の子はただただ首を振る。認めてしまったら、女の子にはもうどうする事も出来なくなってしまうから。 「さぁ、そろそろ夢から覚める時間だわ」

ハイリ

10年前

- 完 -