死神ジットは歌唄い
死神ジットは歌唄い
今日も一日歌唄い
朝と昼と夜とで歌唄い
陽気に陰気に歌うのさ人の死を
陰気に陽気に歌うのさ人の詩を
街を走る死の車輪
哀れマーサは気づかずに
転がるボールを追っかけた
本日最初の死人はマーサ
残る死人はあと8人
- 1 -
死神ジットは歌唄い
一人きりでも歌唄い
今日も独りで歌唄い
彼に巣食うの黒い影
誰が救うの彼のこと?
影は蝕み染めて行く
ヒースも独り病室に
誰も気付かずひっそりと
染まりきったの真っ黒に
ヒースは第2の死人になった
残る死人はあと7人
- 2 -
死神ジットは歌唄い
太陽と月が巡り来る
雨の日風の日雪の日も
こうして世界は回るのさ
こうして世界を廻すのさ
恋人こそがネリーの世界
ふられたネリーは橋の上
真っ逆さまに落っこちた
ネリーの世界は水のなか
さあ第3の死人はネリー
残る死人はあと6人
- 3 -
死神ジットは歌唄い
天から人を見下して
風に任せて歌唄う
風は嗤って通り過ぎ
彼に与えた黒い星
ついでに彼にささやいた
そいつの弾は一発きり
空から狙うは死の流星
漆黒の風通り過ぎ
気分屋ケリスを撃ち抜いた
乾いた嗤いを一つ残し
後に残るは静けさのみ
ケリスは今日の四番目
残る死人はあと5人
- 4 -
死神ジットは歌唄い
骸骨相手に愛を囁き
甘い調べを紡ぎ出す
ぽっかり空いた眼孔見つめ
孤独に思わず力がこもる
手に骨の屑が散らばった
獲物の首に両の手をかけ
その耳元で唄いあげる
なんて哀れなジェファソン
心臓の刻みがゆっくり止まり
命の灯火儚く消えた
ジェファソンで5人揃った
残る死人はあと4人
- 5 -
死神ジットは歌唄い
囁く言の葉に花が咲き
芳しい香りに包まれる
仲良し睡魔と語らって
夢喰い貘を従えて
今宵も旅をしましょうか
目覚めた先も悪夢なら
悪夢を楽夢に変えましょう
体の動かぬエドワード
操り人形エドワード
夢の世界に囚われて
夢の住人になりました
エドワードでやっとやっと6人目
残る死人はあと3人
- 6 -
死神ジットは歌唄い
生きる哀しみ音に乗せ
死する虚しさ詞(うた)にする
愚かな娘が恋をした
愚かな男に恋をした
何も見えない聞こえない夢幻は突然砕け散る
男は逃げたと嘲笑う声
真っ白シーツに横たわる
エルザの生命横に見て
手を伸ばしたはその胎の
未だ名も無き魂に
生まれることも叶わずに
消えたあの子が7人目
残る死人はあと2人
もうあと少しで日が沈む
- 7 -
死神ジットは歌唄い
言葉を切り裂く刹那から
天のお告げの歌唄う
激しい性欲まき散らし
野外に連れ込む獣あり
お気に入りは桑の木で
闇夜に快楽の光産む
そんなに電撃ほしいなら
磊落ジットは遠慮しない
轟く雷鳴ヨハンのもとに
炎の閃光貫いた
真っ黒焦げのヨハンが8人目
光を求めて影となる
残る死人はあと1人
残る死人はあと1人
- 8 -
死神ジットは歌唄い
日がな一日歌唄い
終いにゃ喉も枯れ果てる
自慢の歌声かすれても
人を闇へと誘うのが
たったひとつの仕事ゆえ
世界を回す役目ゆえ
けれどジットは空を見た
暗い暗ぁい空を見た
人を狩るにももう飽いた
悪魔でいるのももう飽いた
手にした鎌で首を狩る
最後は自分の首を狩る
ジットは死に魅入られたと
通りすがりの大人が嗤う
残る死人はもういない
残る死人はもういない
- 完 -
作品情報
死神ジットは歌唄い
#2025
- リレー期間
-
1ヶ月