死神ジットは歌唄い

死神ジットは歌唄い 今日も一日歌唄い 朝と昼と夜とで歌唄い 陽気に陰気に歌うのさ人の死を 陰気に陽気に歌うのさ人の詩を 街を走る死の車輪 哀れマーサは気づかずに 転がるボールを追っかけた 本日最初の死人はマーサ 残る死人はあと8人

toumori

13年前

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死神ジットは歌唄い 一人きりでも歌唄い 今日も独りで歌唄い 彼に巣食うの黒い影 誰が救うの彼のこと? 影は蝕み染めて行く ヒースも独り病室に 誰も気付かずひっそりと 染まりきったの真っ黒に ヒースは第2の死人になった 残る死人はあと7人

やーやー

13年前

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死神ジットは歌唄い 太陽と月が巡り来る 雨の日風の日雪の日も こうして世界は回るのさ こうして世界を廻すのさ 恋人こそがネリーの世界 ふられたネリーは橋の上 真っ逆さまに落っこちた ネリーの世界は水のなか さあ第3の死人はネリー 残る死人はあと6人

lalalacco

13年前

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死神ジットは歌唄い 天から人を見下して 風に任せて歌唄う 風は嗤って通り過ぎ 彼に与えた黒い星 ついでに彼にささやいた そいつの弾は一発きり 空から狙うは死の流星 漆黒の風通り過ぎ 気分屋ケリスを撃ち抜いた 乾いた嗤いを一つ残し 後に残るは静けさのみ ケリスは今日の四番目 残る死人はあと5人

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死神ジットは歌唄い 骸骨相手に愛を囁き 甘い調べを紡ぎ出す ぽっかり空いた眼孔見つめ 孤独に思わず力がこもる 手に骨の屑が散らばった 獲物の首に両の手をかけ その耳元で唄いあげる なんて哀れなジェファソン 心臓の刻みがゆっくり止まり 命の灯火儚く消えた ジェファソンで5人揃った 残る死人はあと4人

13年前

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死神ジットは歌唄い 囁く言の葉に花が咲き 芳しい香りに包まれる 仲良し睡魔と語らって 夢喰い貘を従えて 今宵も旅をしましょうか 目覚めた先も悪夢なら 悪夢を楽夢に変えましょう 体の動かぬエドワード 操り人形エドワード 夢の世界に囚われて 夢の住人になりました エドワードでやっとやっと6人目 残る死人はあと3人

なつ

13年前

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死神ジットは歌唄い 生きる哀しみ音に乗せ 死する虚しさ詞(うた)にする 愚かな娘が恋をした 愚かな男に恋をした 何も見えない聞こえない夢幻は突然砕け散る 男は逃げたと嘲笑う声 真っ白シーツに横たわる エルザの生命横に見て 手を伸ばしたはその胎の 未だ名も無き魂に 生まれることも叶わずに 消えたあの子が7人目 残る死人はあと2人 もうあと少しで日が沈む

Hydrangea

13年前

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死神ジットは歌唄い 言葉を切り裂く刹那から 天のお告げの歌唄う 激しい性欲まき散らし 野外に連れ込む獣あり お気に入りは桑の木で 闇夜に快楽の光産む そんなに電撃ほしいなら 磊落ジットは遠慮しない 轟く雷鳴ヨハンのもとに 炎の閃光貫いた 真っ黒焦げのヨハンが8人目 光を求めて影となる 残る死人はあと1人 残る死人はあと1人

aoto

13年前

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死神ジットは歌唄い 日がな一日歌唄い 終いにゃ喉も枯れ果てる 自慢の歌声かすれても 人を闇へと誘うのが たったひとつの仕事ゆえ 世界を回す役目ゆえ けれどジットは空を見た 暗い暗ぁい空を見た 人を狩るにももう飽いた 悪魔でいるのももう飽いた 手にした鎌で首を狩る 最後は自分の首を狩る ジットは死に魅入られたと 通りすがりの大人が嗤う 残る死人はもういない 残る死人はもういない

13年前

- 完 -