「また山田くん休みか、、」 山田くんはいつも学校を休んでいる、別に病気でもないしイジメられてるわけでもないのに学校にこない。山田くんは引きこもり君だ。黒板係の私はいつも欠席の欄に山田くんの名前を書く、だからクラスの人達よりも少しだけ私は山田くんが気になってる。山田くんを最後に見たのは5月頃だった、、引きこもりの人ってオタクの人多いのかなって思ってたけど、山田くんは違ってた。オタクじゃなくて、逆に
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…オシャレな人だった。 そう。学校ではまず一番に目立って、友達を沢山作りそうな人だった。そんな人が学校に来なくなる原因って、一体何なんだろう? 一度気になってしまえばあとは行動あるのみだった。まず、クラスの中に山田くんの事をよく知っている人がいないか、聞いて回った。 結果から言ってしまうと、芳しい収穫は得られなかった。元々そんなに話をする人ではなかったから、当たり前といえば当たり前かもしれない。
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と、いうか私が被害を受けた。 「山田のこと好きなの?」 そんなことないよ、と笑って返す。 でも好きか嫌いかだったら…わかんないけど… ある日の帰り道。 急に後ろから声を掛けられた。振り向くと愛想の良さそうな男の子が立っていた。 「山田になんか用?俺、山田の親友…っていうと照れ臭いけど、旧友?っていうのもおかしいかな」 いきなり自問自答を始めてしまったが、彼の友達であることを伝えたかったみたいだ。
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一緒に歩きながら、同じ質問をした 「俺も山田に聞いた事があるけど、学校に行きたくないからって言ってたよ」 私は予想通りの答えにイライラしてしまう 「どうして?だって理由が無いじゃない」 彼は私の言葉が不思議で仕方ない様子だった 「山田だったら何の問題もなく学校生活を送れると思う。けど…… 急に立ち止まった彼を見ると、眉間にシワを寄せていた。しばらくして、口が開いた。 「会いに行こう」
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すると彼は指を指し、 「あっちに山田の家がある。一緒に行こう。 」 後に着いていく。 ずんずんと大きな歩幅で歩いていくため、少し小走りにならないと着いていけない。 「ねぇ、きみはなんて名前なの?隣のクラスの人だよね?」わたしは聞く。 「村主。村主かずき。山田とは去年同じクラスだったんだ。」 この人も少し変わった人だった。他の男子に比べ群れないし、時々廊下で綺麗な先輩と話しているのを見たことがある。
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「ここが山田んちだよ」 ピンポーン ガチャ 「野々瀬さんじゃん!どうしたの?」 「山田、この子、お前のこと心配してたから、連れてきちゃったよ。」 山田くんは変わっていなかった。 「まぁ上がりなよ。」 家には山田くん以外誰もいなかった。 私は問う。「学校、来ないの?」 「行かない。」 「どうして…?」 「何しに学校に行くのか、分からなくなった。野々瀬さんはどうして学校に行くんだい?」
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「え…」 言葉に詰まった。学校に行く理由なんで考えてもみなかった。ただ、行かなきゃいけないものだと思っていたのだ。 「おい山田、野々瀬さん困ってるじゃんか」 村主君の一言に、山田君は小さく笑った。 「あぁ、今お茶いれるから。楽にしてて」 山田君が部屋を出てからも、山田君の行った一言が気になったままだった。どうして学校にいくのか、その答え探すより山田君の考えが気になった。
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少しして山田君がお茶を手に戻ってきた。お茶を飲み、落ち着いてから私は単刀直入に思った事を聞いた。 「山田君の学校に対しての考えを聞かせて」 山田君はしばらく私の目を見て口を開いた。 「学校で習うほとんどの教科は家にいてもこなせる。あとはコミニケーション能力か?そんなの嫌でも生活しているうちに身につくものだ。学校に行く理由があるか?否、理由はない。つまり学校に行くという使命感はただの潜在意識だな。」
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「山田君は偉いな。ちゃんと信念があって学校に行かないんだね。安心したよ」 それじゃと言って立ち上がった私を山田君は不思議な顔で見ていた。 「ねえ、学校って楽しい?」 「わかんない……でもいつかそう思える日がくるって思うんだ」 賑やかな朝の教室を背にして、私は今日も黒板に向かう。 日付を書き入れ、欠席欄にチョークを置いたとき入り口の戸がガラガラと開いた。 私はそっと書きかけた名前を消した。
- 完 -