今日は熱田くんが休み。いつもクラスを盛り上げてくれる存在だから、いないと寂しい。 「千春、寂しいんでしょ。毎日こっそり眺めてる相手がお休みだもんね」 そう言って、からかってきたのは親友の千尋だ。お互い、あだ名が「ちーちゃん」なので仲良くなった。 「ちょっと!それ誰にも言わないでよ?」 「わかってるよ、大丈夫!」 ふふふと笑って席に戻ってしまった。 熱田くんはどうしてるんだろう。

紬歌

7年前

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どうもしていなかった。正確を期すならば、何もできずにいた。 昨晩は人生初の40度なる高熱を出し、今朝になっても39度6分あったため、ただただ布団に巻かれる様な形で動くこともままならない状態だ。ただの風邪だと言うのだから驚く。慣れない病気はするものじゃない。 食欲がないなんて信じられない。ああでもバカじゃなかったんだなぁ。 通常共働きの母が休みを取ってくれたのがこそばゆく、ちょっと嬉しくもある。

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「陽太ー。起きてるー?」 階下から母が名前を呼びながら2階へと登ってくる。やがてお盆を抱えた母が扉を開けた。 「あんたの好きなゼリーを作ってみたけど食べられそう?」 「だべる”」 あ、ヤバイ。声が死んでる。食欲の無さは相変わらずだが、喉が張りつくようにカラカラなこのタイミングで現れたゼリーは救世主だと思った。 ゼリーを食べる間も、母は汗を拭いたり熱を測ったりと甲斐甲斐しく世話をしてくれた。

ゆりあ

7年前

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( なんか嬉しい ) そう思った瞬間、吐いた。 吐いてしまった。 うげっ! 気分悪い・・・ 「えっ! 大丈夫? どうしたの⁉︎」 母は大慌て! ( そりゃ、慌てるよな ) 吐瀉物まみれになりながら、そう思った。 汚れたパジャマや布団をきれいなものに交換してくれる母の手がふるえている気がした。 かなり心配しているようだ。 でも「安心して!」とも言えない。 こっちは、ぐったりしてるのだから。

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