始めてお目にかかります、皆様 私、しがない旅の詩人でございます 今日は、皆様に壮大な人生を歩んだ者たちの詠んだ詩をお聴き頂きたいのです 彼らの人生に何があったのか それを想像して頂きたいのです 幸福を唄う詩 不幸を嘆く詩 彼らの詩は十人十色 皆様の好みに合う詩があることを願います では、はじめましょうか
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では、まず初めの詩をどうぞ。 無題 気づけば、あなたが隣にいました。 散々泣いた後 歩き疲れた後 迷子になった後 苦しくて 悲しくて 辛くて もう、駄目だと思ってしまったこともたくさんありました。 けれど どんな時にも、気づけばあなたが隣にいました。あなたはいつもふらりと私の元にやって来て、春風のように私に微笑みかける。そして優しく私を元気付けてくれる。 ありがとう。 大好きです。
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先ほどの詩はどうでしたか? 続いての詩をどうぞ。 無題 この詩を読むあなたへ。 あなたは私の事を知らない筈です。 私もあなたは知りません。 でもこの詩を読んで下さい。 私は今病院にいます。 私の余命はあと一週間です。 でも残り少ない人生を歩んでいます。 ですがあなたはまだまだ長い人生です。 この命を大事にして生きていって下さい。 最後に一つ… 私の人生 ありがとう
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素晴らしい詩ができていますね。 次の詩は、貴方の好きなように考えて下さい。 無題 掴めることのないその手を 僕は、ずっと追いかけていた その手が消えてしまっても その手があった場所を 必死に 追いすがって 泣いて 僕のこの気持ちは もう君には届かない あの日の温もりを 僕は今日もまた 思い出す
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切なくなりますね。さあ、そろそろ種明かしも必要かもしれません。 次の詩も自由に謳って下さい。 無題 貴方が笑っていったなら 僕も笑って明日を待とう 欠落のベッドは後にして 桜が見たくなる時がある 無性にたまらなくなって 淋しさに自分を投影する 僕は涙を流すことにした 彼女が笑った明日に向け そっと笑い返せるように
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ああ感情移入してしまいますね。 どんどんまいりましょう。 無題 笑って、泣いて、怒って 君の顔を思い出す 悲しんで、喜んで、怒鳴って 君の声を思い出す 君の明日に感動を 君の昨日に喜びを 一緒に居ることができたなら 一緒に笑うことができたなら それだけを想って 今日も一人で
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なんと、切ない。何度も読み返したくなってしまいます。 では、次。 無題 満月になりたい 君は何度もそういった 今はまだ半月だ 満月は彼女 指差す先はテレビの女優 歌もドラマも結婚も 全てが順風満帆じゃない 相槌をうってはみたものの 納得はできない 彼女はきっともう欠ける 僕には満月に見えない 月は見る場所によって形を変える 僕にとっては君が満月 欠けることのない 永遠の満月
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素直な気持ちがとても響きますね。 それではお次も参りましょう。 無題 幾千の夜を前にして 貴方が涙を流すのなら 私はここで 笑いながら貴方を待とう 幾千の朝を背にして 貴方が足を止めるのなら 私はここから 溢れる程の思い出と共に手を振ろう 前を向いては いつか出逢える貴方に 振り向いては いつか出逢った貴方に 私はここから手を振ろう
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如何でしたでしょうか、七人七色の虹が、あなたにどんな風景や人の生きる様を思わせたでしょう。 それでは題名を発表させて頂きます。 2→迷い日と隣人 3→色褪せない病室 4→葉脈とせん 5→散り桜に喪す泪 6→追憶、光の残像 7→満月慕情 8→千夜一夜の刻 私が吟遊詩人として、この詩に感銘を受けた事を伝えたかったのです。 お気に召されたなら、どうぞあなたも謳ってください。 また、お会いしましょう。
- 完 -