わたしの愛犬、ポチ

「おい。餌くれ。腹が減って仕方がないんだ」 「⁈」 親父の様な声で喋ったのは、愛犬、ポチだった。

仏もどき

12年前

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「え...」 「俺だよ。俺。お前の愛犬のポチだよ。」 「ポチがしゃべった〜」 私は焦って母親のいる台所に向かった。 「母さん、母さん、ポチがしゃべったんだ。」 「なんて言ってたの?」 母は至って冷静だった。 「え..たしか、腹減ったって。」 「じゃあ、これ。」 そういうと母は犬の餌を私に渡したのだ。

T_Y

12年前

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餌を持って、愛犬の犬小屋の前に座る。やつは散歩、食事、排泄、これといった用がないと小屋から出てこない。 ペットフードを入れたスチール製の容器を揺すって、音を立てると、ゴム鉄砲を飛ばす勢いで飛び出した。 「メシだ! メシだメシだメシだメしダメしダメしダメし、ダメ、し、ダ...メ...で、しょう...。ペット...フードって...あんた...はぁ」 ポチは飛び出て、二秒でくうんと意気消沈した。

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「おーい」 ポチはそのまま、皿の前で脱力している。突ついても、反応がない。 もしや、空腹の末に気絶!?いやいや、昨日もちゃんと餌やったし。 自分にツッコミながら、ポチのそばにしゃがんだ。 「ったく…。何が食べたいんだよ」 すると突如、ポチが目にも止まらぬ速さで飛び起きた。そして、体して大きくもない瞳を輝かせて、わん!と一声。 「ポッキー!!!!」 ええぇぇえーーー!?ポチがポポポ、ポッキー!?

Florence

12年前

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だーめダメダメ‼ポッキーとかチョコじゃん! 犬はチョコレートで死んじゃうんです‼ チョコレート中毒って聞いたことあるでしょ?え?ない?犬なのに? チョコレート中毒ってのは、重度だと異常興奮・震え・発熱・不整脈・痙攣とかが起きて最悪死に至るんだよ。わかる?どぅゆーあんだすたん? 「あーあ、ちょっと学があるとすぐ見せびらかそうとするからな。お前、友達少ねぇだろ」 「うるせぇシバくぞ」

ほろろ

12年前

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「ぁんだと!ヤんのか?あ?ガルルル!」 ぷつん 「ムカつくっポチのくせして生意気っあんたの為を思ってダメっ言ってんでしょ!もうエサやんねーっ‼‼…ハァハァ」 「ム・・・」 「・・・ハァハァ」 「・・・」 「・・・や、やんないだから…」 「…クゥ~ん」 ぐはっ‼キュン♡ 反則だろそれ!この期に及んでそんなつぶらな眼で愛犬らしいク~ンって… 「…チョ、チョコ以外ならやってもいい…」

真月乃

12年前

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「ほら。」 わたしは仕方なく家に戻り、ポチの為にを骨っ子を何本かもってきてあげた。 少し不服そうだけど、餌だけに夢中になってもぐつくポチは可愛い …なんて思っていたら。 「げふ。食った食った!ちょろいもんだぜ。少し甘え鳴きして、この調子だよ!やっぱおめぇ友達いねえだろ!ぎゃははは!」 韓国で食われればいいのに。 心からそう思ったけどしまっておいた …そういえばポチ、なんでしゃべれてるんだろ

Lavi

12年前

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仰向けで満足そうに腹を掻くポチを横目で見ていた。 「ポチ、いつから喋れたよ」 「あ、俺ポチじゃない」 「は?」 「死ぬ間際に未来にタイムスリップして犬ん中にいるっぽい」 ポチ、つくづくどうしちゃった? 「ぎゃはは!その顔!小さい頃のお前と一緒によくポッキー食ったのに。俺を忘れたのか?」 よくポッキー食った・・・? あ。 「お前、何歳になった?」 ポチが優しい声で聞いてきた。

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途中で母も加わり、わたしたち家族は夜遅くまで語り明かした。父は最後に 「お前は俺の最高の娘だ!胸ぇ張って生きろ!俺はおまえらをいつだって見守ってるぞ!たっしゃでな!」 と言って、眠りについた。その言葉は、わたしの心を温かいもので満たしてくれた。 次の日、ポチは元のポチに戻った。話しかけても首をかしげるだけ。 わたしは押し入れの中からひっぱり出したアルバムを、いつまでもながめ続けるのだった。

fusuke

12年前

- 完 -