悪女に手向ける一輪の薔薇

あなたの香りがまだ部屋に残っています。

愛し合えは愛し合うほど悲しくなってゆく2人、
永遠に結ばれる事のないカルマ

あなたの優しさが手に入るのなら
わたしは悪魔と契約しても構わない

死後の世界で離れ離れになるけれど
今世で手に入れたいのはあなただけ

そのたくましい胸もやさしく髪を触る指も
誰にも渡したくない。

私だけを見てもらえるには

あの女を殺さねばならない

バーバラ

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私があの女に負けた理由が解らない。

あんな醜い女を選んだあなたも憎い、けれど、私の彼を奪ったあの女が許せない。

だから、殺さねばならない。

最も屈辱的な方法で。
簡単になんか、逝かせてやるものか。

苦しんで、のたうって、醜く歪みきった状態で・・・やっと逝かせてやる。
そう決意した鏡に写った私の顔は、ゾッとする程妖艶に見えた。

snow

- 2 -

悪魔との契約

それはあの女を殺すことで、一生彼と愛し合うことが赦されるというもの。
死んだ女は、悪魔が存在自体を消してくれるため、あの女がこの世に生存していたことを知る者は私、ただ一人となる。
女を消した罪と共に、そして彼と共に・・・私はこの一生涯を過ごすことになる。

一生、それは私が死ぬまでということ。
死後の世界で、私が彼と共にいることは赦されない。
しかし、私はそれでも十分だった。

aegis

- 3 -

あの女は消えた。
私の他の誰にも知られることなく、人々の記憶から抹殺されて。

明日はやってくる。
そんな女のことなど気にしない風に。
世界は変わりなく回り続けるのだ。

勿論、彼の記憶の中からも消されていた。
彼は時々、頭を抱えるように、あの女と過ごした時間の穴を思い出そうとするが、失敗する。
なんだか、最近、ずいぶんと長い時間を失ったような気がするんだ。彼は言う。

いい気味だった。

aoto

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時折、遠くを見つめるような彼を見ることもあった。だけど2人でいられる時間は何物にも代えられなかった。死ぬまで一緒。
彼が髪を撫でてくれる度、逞しい胸に寄り添う度、じわりと涙が出そうだった。

幸せだった。彼は私だけのもの。
だけど、あの女の一周忌が近づく頃に、彼の声が出なくなった。

過度のストレスが彼の声を奪った。

純花⑅◡̈*

- 5 -

彼は声を取り戻すためカウンセリングに通い始めた。

悪魔との契約は成功したはず、現に彼女は消し去った。私達の愛は永遠のはず、私だけを見ていて、離さないでいて。どうして彼が私を見る目は空虚なモノなの、存在していないモノを見るような目で見ないで

ある日、彼は声を私に向け発した。

「かなえ!」

この世界から消えさった彼女の名だった。

どうしてあの女の名を呼ぶの?なぜ私に向ける目は輝いているの?

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「もうすぐかなえの誕生日だな! プレゼント何がいい? この前聞いた時は、『俺さえいてくれればそれでいい』って言ってくれたよな? でもやっぱり俺、何か形に残るような物を、かなえに残したいんだよ。なぁ、かなえは、何が欲しい?」

かなえ、かなえ。
あの女の名を何度も私に向かって。それも笑顔で。

「かなえ? ……何で泣いてるんだ?」

ーーどうやら、彼の記憶から消えたのは私の方だったらしい。

グレイシア

- 7 -

あぁ、あぁ、何て事だろう。
私が消えて、あの女が残り、あの女は消えたはずなのに、あの女が私に成り代わり、私はあの女になり…?

ひたり、と震える両手で、自分の顔を覆う。
そんな馬鹿げた事、起きる筈はない。それなのに、あぁ、あぁ!
私の鼻はこんなに低くなんてない、私の目はこんなに小さくなんてない、私の唇はこんなに薄くなんてない、私の顔はこんなに醜くなんてない!!
鏡に映るのは、あの女の顔だった。

かえで

- 8 -

悪魔は私を裏切った‼あの女をこの世から消し去りたい‼もはや望みはその一点。

私は刃物を手に取り、奴を切り裂いてやった‼ 遠くであの女の悲鳴がする。
「ハハッ‼ ザマアミロ‼‼」
ゴトリと落ちる〝かなえ〝の首。

「俺もかなえに捨てられたら『悪魔と契約』とか言っちゃうのかなwww」
「やめてよ〜。」

二人の影にどす黒く染まる女の屍。
妖艶なまでに美しく。
薔薇色に。

- 完 -

作品情報

悪女に手向ける一輪の薔薇

#326

リレー期間

6ヶ月