終わりの序章

違う違う違う違う違う違う違う違う ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい 祈っていた。押入れの中で。 叫んでいた。痛みを噛み切って。 逃げていた。足場を探して。 それから空は蔽われました。 東京に、全長80mを超える人知を超えた化け物様がたーくさん現れ、跳梁跋扈なさっている。 あーあ、どうしようとどうもならない、 ──これは終わりのちょっと手前の物語。

13年前

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──はじまり。 それは、3日ほど前のこと。わたくし大崎真由は悪友たちと連れ立って、高尾山へハイキングに出かけたのでした。 でも正直、山なめてました。都心から1時間くらいなものですから、サンダル履きで登ったら、たちまち足はマメだらけ。悪友たちはわたくしをおいて先にいってしまうし、おいていかれたわたくしはどこをどう間違えたか、へんな小径に迷い込み。 ──そして、あの祠を見つけてしまったのでした。

saøto

13年前

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忘れさられたかのようにその祠は、苔や木の根に覆われていて、ハイキングをする者の目には決して止まらないであろう小さな小さな物でした。 私は疲れて歩みを止めておりましたから、祠の存在に気付いてしまったのです。今考えてみると、中に居たアレに呼び寄せられただけなのかもしれません。 歩道を外れひとり、落ち葉を踏みしめながら土の壁に沿って立てられた祠に近付くと、何も考えずに祠の戸に手を伸ばしたのです。

なつ

13年前

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何か、いる。 手を伸ばした瞬間、祠の奥から私を見つめている何かを感じたのです。 頭の中に語りかけられた言葉。 「たすけて」 空耳だと思ってそのまま何もなかったかのように、少し休憩し、祠はなかったかのように歩きはじめたらよかったのかもしれません。 私は祠の戸を、開けてしまったのです。

12年前

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瞬間でした。目の前に何かが動く影。ふと頬を伝う液体の感覚と同時に痛みが走ったのです。 皮膚はざわつきアドレナリンが毛穴から吹き出そうなほど怯えました。 振り返ると再び影が素早く動きます。影を捉える度痛みが増え、闇雲にカバンを振り回しました。 何回目だったかわかりません、カバンがぶつかる感触が腕に伝わり、影の動きが止まりました。すぐさまカバンを振り下ろし、何度も何度も何度も。 まさか子供だなんて。。

KeiSee.

12年前

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5、6歳程の女の子が地面に突っ伏して倒れていました。 赤い着物は泥まみれでところどころ破れておりました。その割には髪は綺麗で、切りそろえられた毛先は一本の突出もありません。 私は女の子に乱暴をしてしまったことにショックを受けていました。 その姿が人間社会に出るための器に過ぎないということにも気づかず、女の子が私を傷つけようとしたことも忘れ、早々と同情の念を投げかけてしまったのです。

miz.

12年前

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自分で殴り付けておいてなんですが、「ごめん、大丈夫?」と様子を伺いました。女の子は突っ伏したまま動きません。 私は意識を確かめようとしゃがんで綺麗な髪に手を伸ばしました。 その時でした。 女の子は手をつき上体を起こそうとしたのです。意識がある! 安心も束の間、様子が変だと気がつきました。 「ぁぁぁああああああぁぁぁ‥‥‥」 女の子は低く唸りゆっくり頭をあげたその顔に私は小さな悲鳴をあげました。

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無数の目が、彼女の顔中でぱちりぱちりと瞬いていたのです。 全て違う色、違う形をしていて、明らかに人間の目ではありませんでした。 「出てきちゃう」 女の子の歪んだ唇から悲鳴のような言葉がこぼれました。 「たすけて」 女の子は細い腕を伸ばしてきました。 しかし、その手が私に触れようとした時。 ぱちりぱちりぱちり、と、白い腕一面に目が開きました。 気づけば、私は女の子を突き飛ばしていました。

さはら

12年前

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何をどう帰ってきたのかわかりません。 私は自分の家の押入れに潜みました。何処にいてもあの子の目が追いかけてくるようで。 辺りはしんとしていました。 ぐちょ…ぐ…ちょ。 私の身体が疼きます。暗闇の中に無数の光が。私の体の至る所に目玉が生まれ…私の中から何かが出てきそうになっています。 「あーぁ。だから助けてって言ったのに。みぃんな出てきちゃうよ。きゃきゃきゃ」 ちが…う。違う違う違………!!

RaRa

12年前

- 完 -