キャラメルロールケーキを食べよう

今日、私の誕生会に参加してくれた皆を紹介しよう。 私。以上だ。 突然だが本日一番の衝撃的な出来事を聞いて欲しい。 お気に入りのケーキ屋で私の大好物【キャラメルロールケーキ】を予約していたものの、いざ食べてみるとそれが【塩キャラメルロールケーキ】だった事だ。そんなものメニューにすら無かったはずだ。そしてこの溢れ出ている私の涙も決して関係ない。まったく職人さんときたら… 「なぜこんなことに…」

13年前

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くやしい!とにかくくやしい! 何に対してだ? ケーキか!?そもそも誕生日会なのに出席者がいないことか?! くそっ…このもやもやをどうにかして解消したい。

あいく

13年前

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あれー? 待てよー? そー言えばー? 私の誕生日ー? 今日じゃなくてー? あと二ヶ月ー? 先だったっけー? うそー? もやもやー? 悔しさー? 苦しさー? 来るシーサー? シーサーがー? 来るー? 私のー? 誕生日にー? 今日じゃないからー? 前祝いー? 出席者はー? シーサー? シーサー! 「ちわーッス。シーサーでーす」 家にシーサーがやって来た。

nezumicyan

13年前

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何だか孤独で頭がイカれちゃったんじゃないかって心配されてそう。 いや 孤独な私の頭を心配する人間なんていないんだったっけ。 でもシーサーはいたわけ。 《狛犬である》 え。 《我は狛犬である。シーサーではない》 だそうですよ、皆さん! 新情報が入りましたー!! とにかく我が家の玄関に鎮座ましまししているんだな、この石で出来た何者かが。 それでもって私の頭に直接話し掛けてくる。

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《今日は我の誕生日である。》 いやいや、知らないし! 知りませんけど! 狛犬の知り合いすらいないから! 《今、知り合いになったであろう。さあ、我の誕生日を祝うが良い》 勝手に心を読まないで欲しいなー。 そして何故今知り合いになった狛犬の誕生日を祝わないといけないんだ。 《今日は汝の誕生日ではないのであろう。その甘味が無駄にならずに済むでは無いか》 …ん? 待て待て、何時から居たんだ狛犬。

あとら

12年前

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《およそ半世紀前からだ》 やーん全部見てたの恥ず ……うおおお長い!あまりにも長い!全部見てたとかいう次元じゃない! そこは普通、 「汝が折角の甘味に無駄な塩味を加えはじめた時からだ」 とか言うとこだよ!? 《我はこの家の守護狛犬なのだ》 初めて聞いたよその単語!守護狛犬って何!?普通に狛犬じゃだめだったの!? 《略してシュゴコマだ》 可愛く略されても!違う!照れるな!褒めてない!

トウト

12年前

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まぁ、まあまあ、とにかく落ち着こう自分! ところで…シュゴコマさん、 ≪シュウちゃんでいいぞ≫ えっ!なっ、なんだーΣ(゚д゚lll)!? 調子乗ってるのか?可愛くなんかないし、 っていうか何だ?シュウちゃんって!? ≪シュゴコマの略だ≫ あぁー!もういい… ところで、シュウちゃん狛犬だけど誕生日を祝うって何したらいいんだ?

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《まずはその供物を寄こすのだ》 塩キャラメルロールケーキの入った箱を右前足で指すシュウちゃん。甘いもの好きなのかな。 《酒はないのか》 「ないない」 《一人しかいないのか》 「あいにくね」 《我も半世紀前から一人でいた。仕方ないからそなたの側にーー》 ピンポーンとインターホンが鳴った。シュウちゃんが何か言っているが、そういえばずっと玄関にいた。 「シュウちゃん、奥の部屋入ってて」

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《無理だ。自力では動けぬ》 じゃあ、どうやって入ってきたのよ。 どうにかシュウちゃんを隠して玄関を開けると、宅配便だった。 荷物の宛先はシュウちゃん。送り主は、実家の母。 「なんで?」 《なぜだと思う》 ごくりと生唾を呑む。 「貴方が、私だから?」 《んなわけあるか》 真面目だったのに! 荷物を開けると、私の大好物。狛犬とか誕生日とか、途端にそんなことはどうでもよくなる。 いいや、食べよ。

sir-spring

11年前

- 完 -