一番おいしいごはんの食べ方

目の前には炊き上がったばかりの白米と つやつやに輝く美しい形の卵が一つ。 ごくり…

eman

12年前

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白米の上に卵を割り落とし、醤油をさっとかけて、一気にかき混ぜた。 なんとも言い表し難く、食欲をそそられる。 行儀など無視してがつがつと口に詰め込んだ。

山桜桃

12年前

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お腹が空いていた反動か。 それともこのツヤや彩りのせいか、しなやかな手首の運動で、箸が動き、口の 中に運ばれていく。 あゝ、これぞ至福。 あゝ、これぞ至高。 今、この瞬間の幸福度はマックスに他ならない。 確信する。なぜならこの単純運動が止まらないからだ。 「あ、いけね…茶碗が空になっちまった‼︎」 こんな不幸は良くない。 席を立ち、炊飯器の前まで移動した。

黎人

12年前

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炊飯器にはまだゆうに3膳分は輝く白米が入っている。 しかしここで重大な問題が一つ。 卵が無いのだ。 冷蔵庫を覗くとそこには・・・ ・マヨネーズ ・わさび ・醤油 が入っていた。 冷蔵庫の上にツナ缶とかつお節のパック。 この中に先程の至福を再現、或いはそれを上回るものは存在するのか。 さて、どうする。

makino

12年前

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食うしかないだろ! ツナ缶を開け、細かくほぐす。マヨネーズを多めに。ワサビを少々。 こりゃ美味いに決まってる。 隠し味程度に醤油を落として混ぜる。 かつお節は……今はいいか。 熱々のご飯をよそい、ツナをのせる。 いただきます! あゝ、これぞ至福。 あゝ、これぞ至高。 あゝ、これぞ至極。 卵とどっちが美味いかなんてどうでもいい。 比べるべきにあらず。 あれはあれ。これはこれ。 ふぃ〜うめ〜

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また茶碗が空になったが、腹八分目にも達していない。しかし、炊飯器には2膳分の白米が残っている。 「あ、いけね…ペース配分を間違えちまった!」 うかつ。あまりの旨さに、1膳でツナ缶を食い尽くしてしまった。 かつお節の出番か。しかし、醤油を垂らすだけでは、先の2膳分の感動は得られまい。 さて、どうする。

hayayacco

12年前

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かつお節にマヨネーズ、それに醤油を垂らしても、意外といける。 しかしだ、それではさっきのツナと殆ど同じ。満足度では、ツナに軍配が上がるかもしれない。 いまはもはや空腹では無い。 もう一工夫、何かが欲しい。 そうだ、茶漬けはどうだろう。 熱々をさらさらと掻き込むのは、食い方に変化も出て、うまそうだ。 かつお節と、醤油とわさびを用意する。 それから…忘れていたが、確か戸棚の奥にアレがあったな。

12年前

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「おー、あったあった。」 戸棚の奥で見つけたのは、いつだったか母が送ってきたものだった。 「食いもんだよな」 一言確認するも、誰も答えない…ま、当然だな。 一人暮らしだからな。 「おー、いー感じだ」 袋を開けたところ、なんとも言えない香りが漂ってくる… 食欲をそそる香りだ… そもそもなんだこれは…

春風海架

12年前

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そうだ、思い出したぞ。 母お手製の佃煮だ。これをそのまま白米にのせて1膳。かつお節、わさびと共にお茶漬けでもう1膳。絶妙な塩気と甘みは、どこにも売っていない味。 母さん、わざわざ俺のために作ってくれたんだな。 何度もおかわりする俺に、母さんはいつもにこにこしながらご飯をよそってくれたっけ。 さて、炊飯器は空になった。 もう一度白米を炊こう。 そしてそれを待つ間、久しぶりに母さんに電話をかけよう。

lalalacco

12年前

- 完 -