手品師 ジョニー黒田(51)の苦悩

私は手品師の、芸名「ジョニー黒田」(51)。

「おおお〜〜〜っ‼︎」

今日も小さな健康ランドで一人、手品を披露している。
最近流行りの若者に比べると大した事はやっていないが、

「おじちゃん、すご〜い!」

私はこの雰囲気だけでも十分満足している。

だが…実は、私には他の誰にも秘密にしている事がある。
それは…

実は私は超能力者で、やっている手品が全て超能力でやっているという事だ。

hyper

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「タネも仕掛けもございません」

これが手品師の常套句だ。
しかしそれはあくまでステージ上の台詞であって、実際はいかなる手品にもタネや仕掛けが存在せねばならない。
これは手品師の鉄の掟だ。

私の手品には、タネも仕掛けも存在しない。客に何一つ嘘をつかない代わりに、手品師として最大のタブーを犯していることになる。

よって、派手な「手品」を避けているのは、タネを追究されるとマズイからでもあるのだ。

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そんな私にピンチがやってきた。
「なんですって?手品教室?」

健康ランドの館長がある日そんな話しを持ちかけてきた。
「お客様の声アンケートで多いんだよ〜!ジョニーちゃん結構人気でさあ、頼むよ!」

ちょっ手品なんて知らんよ私は!

しかし館長とはこの施設ができた頃からもう10年以上の付き合いだ。今やジョニーちゃん、ヤッちゃんの仲だ。

断るわけにはいかない!
手品のネタを仕入れなくては……

ハルノテル

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そしてついに今日は日曜、手品教室の日になってしまった。
生徒は三井のオバちゃん(62)と横田のじいちゃん(84)、そしてひ孫のはるくん(5)。

「えー、スプーンのここをこう持って、お客さんに見えないようにここを押すと、実はスプーンは簡単に曲がり……あれっ」

曲がらない。
いつもは超能力を使って曲げているからだ。
さてはあの、「簡単! 手品種明かし」という本はインチキだな。古本屋で百円だったし。

lalalacco

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ううむ。ここは超能力を使おう! 自分だけでなく、お客さんにも超能力を「照射」するのだ。ここは是が非でもやらねば!

「えーと、そこのオバちゃん。うん、三井のオバちゃんね。ちょっと、こっちに来てくれるかな〜〜?(あまり遠いと、超能力で狙い撃ちできないのよ)」
観客は半信半疑である。

「じゃあ、スプーンをみんなに見せて? 曲がらないよね。ちょっと、こっちに向けて。そうそう!」

今だ! ビャーーー

響 次郎

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「「おぉ〜曲がったぁ!」」横田のじいちゃんとはるくんが、クタリと首を折ったスプーンに歓声を上げる。

一拍遅れて三井のおばちゃんが、2人以上に興奮しながら手品の成功を喜んだ。

ふぃ〜何とかなった。
と安堵したのも束の間。口を尖らせたはるくんが「ぼくもやりたい」とフォークを手にする。

「あ、はるくん!フォークは上級者向けで…」
マズイ!タネのない食器は曲がらないよ!って、え?

曲がった……⁉︎

おやぶん

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「おお!流石わしのひ孫!はるくん凄いぞ〜」
「あら本当、上手ね〜はるくんは」
横田のじいちゃんと三井のおばちゃんはチビッ子を褒めちぎる。
調子に乗ったはるくんは、
「ひいじいちゃんおばちゃん、こんにちは」と言いながら、スプーンの頭をお辞儀させては再び真っ直ぐに、そしてまたお辞儀を何度も繰り返している。

「先生、どうですひ孫は。才能ありますか」
「…あはは」
冗談じゃない!天才エスパーじゃねーか!

真月乃

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そう胃の辺りで叫んだ時。

「お兄さん、ちょっと」

はるくんが、こちらに小さな手を差し伸べてきた。

そして握り返すと•••

ポンッ!

「ジャーン、ひよこさん!」

中から可愛いひよこが誕生。
そして驚いた私を見て、はるくんは意地悪く笑った。

カチン。

「はるくん、私の口をごらん」

ポンッ!

「はい!口の中から、なんとニワトリさんが出てきましたー!」

はるくんが悔しそうな顔をする。

しとっぴ

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「かしてっ」
はるくんはニワトリを引ったくると、宙へ投げた。落ちてきたそれは、ぬいぐるみになっていた。
負けてたまるか!スカーフを取り出して、ぬいぐるみにかける。スリー、ツー、ワン‼︎
無数の鳩が飛び立つ。やはり手品には鳩がよく似合う。
三井のおばちゃんと横田のじいちゃんが手をばしばし叩いている。…決まった。

「今の手品、何から始めればいいのかしら?」
おばちゃんの一言で私は現実に引き戻された。

のんのん

- 完 -

作品情報

手品師 ジョニー黒田(51)の苦悩

#12230

リレー期間

1年3ヶ月