「今日の議題は、〈貧乳と巨乳どちらが真のおっぱいであるか〉だ!」 「意見を述べる時は、どちらのおっぱい派かを宣言してから言え!」 「では、手を挙げるのがはやかった田中述べよ!」
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「無論、巨乳だ」 田中の確固たる意志をのせた言葉に貧乳派の面々は確実に出鼻を挫かれた。 「本能的に巨乳に惹かれているのに、女性への体裁を守るために貧乳好きを語る貴様らは臆病者だ!」 「圧倒的な母性を体現する巨乳を否定するなど笑止千万!」 凄まじい勢いで繰り出される発言に、一部の貧乳派の心は折れていた。 しかし、貧乳派には彼がいた。 そう、斎藤だ。
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『わかってないなあ~もう。』 そう切り出す斉藤はこの学校の中でも一位二位を争う程のイケメンだ。 スポーツ万能で勉強も出来るし誰にでも分け隔てなく優しく同い年は勿論の事、後輩からは憧れの的だし先輩からも可愛がられている。 絵に描いた様なモテ男斉藤の発言は これまでの経験からだろう、多くを話さずとも妙な信憑性を生む。 『貧乳の良さはその時になりゃ~わかるさ』 『そう思うだろ?飯塚』
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「あ、あぁ、そうだな」 飯塚は突然話を振られ少し驚いた様子で答えた。 一呼吸おいて、 「もちろん貧乳の方がいいに決まってる。 巨乳は年をとると垂れて萎んじゃうしな。 貧乳ならその心配はないぜ」 そして口角をあげながら、 「それにさ…何と言っても貧乳は 感度が良いんだよ。まあ母性なんかを求める童貞君には分からないかもしれないけどな」 「…まてよ」 巨乳派の童貞、松本が飯塚の胸ぐらをつかんだ。
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松本の巨乳好きは亀仙人と呼ばれているほど有名だった。 「たしかにそうさ。お母さんのブラシャーの臭いもかいだりした。でも俺のマザコンはどうでもいい!想像して見てくれ!痩せてるくせに巨乳のあのライン!カバンをクロスしてかけた時のあのラインを!あぁ想像してみてくれ」そういうと沈黙が続き松本の下半身が小刻みに震えた。 彼の想像力はすでに現実を遥かに凌駕しているのだ。 「たしかに」沈黙を破ったのは本田だった
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本田は落ち着いたトーンで、話し始めた。 君たちは、ふわふわで、優しく温かいのオッパイに顔を埋めたことはあるのかい?谷間の汗を口に含んだことはあるのかい?一度試してごらんよ、胸がたれる?、感度がどうだ?なんて言ってられるかい?想像してごらん。とても気持ち良いんだ、この世に天国があるんだよ。究極の癒しだよ。ずっと黙ってるけど、お前は本当はどっちなんだ?原田?意見聞かせてくれよ。すると原田は、
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黒縁メガネに人差し指を当て、語り始めた。 「君達は全く、男の視点からしかオッパイを論じていない。女性にとってどうかが重要なのだ」 フェミニストの原田らしい論点の提起である。 「オッパイが大きければ肩が凝る。夏場は汗疹で苦しむ。君達はブラジャーが大きさで値段が何割も違うことも知らないだろう。一部の男が巨乳を求めるあまり、女性に過度な負担を強いているんだ!」 原田が拳で机を叩くと、飯島が目を覚ました。
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「ZZZ」 これは寝言ではない。飯塚自身の女性の胸の大きさに対する欲望だった。 彼こそ巨乳ハンターの異名でどこぞの業界に名立たる功績をあげてきた男。 つまりZZZが意味しているのは、カップ数のこと。 場がざわついた。どよめきさえ起こる。 ZZZ、だと。そんな代物に耐えきれるやつがいるってのか? いいやそんなのありえねえ! そんな喧々囂々飛び交う中、一人、ため息をつくものがいた。 そう、北川だ。
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「もういい加減にしてくれ!聞いてられないぜ」北川は首を横に振りながら続ける。 「だいたい大きい小さいで優越をつけるなんて、まったくもってナンセンスだよ」 熱くなった田中が叫ぶ。 「き、貴様!この神聖なる討論にケチをつけるのか!」 「そうじゃない。ただ論点がズレてると言ってるんだ。結局、巨乳か貧乳、大きい小さいよりも、キレイかどうかじゃないのか?」 一同、静まりかえり、一斉に叫ぶ。 「美乳だ〜!」
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