星喰い

満天の星空に向かって、銀の双眼鏡を覘く。
星喰いに喰われた星はないか、観測する。それが僕の仕事だ。

空には大きな満月がかかっていて、金色や銀色に瞬く星灯が地平線の彼方まで美しく瞬いている。

その中にもし、不自然な真っ黒い穴を見つけたなら。
それが〝星喰い〟だ。

彼らは僕らの国の空に住んでいる魔物だ。夜になるたび起きては綺麗な星たちを喰らってしまう。

「キャプテン!星喰いを発見しました」

kam
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マストのてっぺんで一等航空士が叫んだ。

「二時の方角、三ツ星が一つ喰われました!」
「よし、射ち落とすぞ!」

白銀の鏃がきらめく。僕らは一斉に矢をつがえて、満月のように弓をきりきりと引き絞った。

「放てえっ」

ぽっかりと空いた暗闇目掛けて、いくつもの矢が銀色の軌跡を描く。
僕らは急いで双眼鏡を構え直す。
流星のように飛んだ矢は、狙い過たず星喰いに命中した。

喰われた星を取り戻さなければ。

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「進め!」
号令に合わせ、船は星喰いの落下する方向へと邁進する。

傷を負っても星喰いは手強い。大抵は地に落ちず、宙を彷徨って逃げるのだ。何とか追いついて捕らえ、喰った星を吐かせなければならない。

運がよければ、奴が射られた瞬間に驚いて星を吐き出したりもするのだけれど、今日はそれはなさそうだ。双眼鏡の向こうに光はなく、ただ星喰いの影だけが──

「いました!」
僕は声をあげる。

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ほぞほぞと闇を抱き、星喰いは飛行していた。
一等航空士が無線で連絡を取ると、対岸から銀色の網を掲げた飛行艇が現れた。
星喰いは繁殖力が強く、逃げられると厄介なので、一匹一匹を確実に捕らえなくてはいけない。行く手に張られた網へめがけ、追い込むように距離をつめる。星喰いは触覚のようなものをうねらせ、風の流れを読んでいた。探しているのは逃げ道だろう。虚空を蹴るようにして、刹那星喰いが宙を走った。

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どんな生物も追い込まれると予測できない行動に出る。星喰いもまた例外ではない。
「下だ!」
誰かの声と同時に強風が僕らの船を巻き上げる。触角が船底を掠める感覚があった。
「八時方向!目標、更に潜ります!」
その報告に甲板の全員が青ざめた。
星喰いは通常低空飛行はしない。目の退化により、障害物の多い場所では自由に動けないからだ。
何としてでも止めなければならない。地上の灯りが飲み込まれる前に。

nanome
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「全速で追え!」
何としても仕留めなければ。この先にあるのはは国の二大都市の1つグロウだ。
都市への距離はあるのだが、星喰いが星から得るエネルギーは凄まじく、有り余ったそれは莫大な生命力を生み出す。言葉は変になるが、アレにスタミナなんてものは無いもの同然なのだ。
「絶対に逃がすなよ!」
僕らは顔を強張らせる。
「ただでさえ予想外な動きをした後だ。ここで産み落とすなんてしないでくれよ」

クミ太
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グロウには蛍灯という習慣がある。昼間でも薄暗い街なので、蛍光顔料を練り込んだ特殊なフードを被って歩く人々は地上の星。

「お願いだからグロウ市民を襲うなよ……」
急下降の中で念じる。

この国は二大都市からなっていると述べたが、実際はさらに複雑だ。比較的最近まで争っていた二国が、星喰いの利害関係から手を結んだ。グロウを守れなければ、再び混沌と化す。

だが、この日は星喰いにツキがあるようだ。

るーさん
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屋台が軒を連ねる中央広場には夜も人が集まる。星喰いは退化した目の代わりに鼻が利く。そして、眩い灯りを頼りに標的を定める。

呑み込んだばかりの三ツ星が、腹の中で蠢くのが目視できた。不気味な奴。口ばかりの顔で広場に迫る。グロウ市民も僕らの船の動向から事態を把握し始めたようだ。眼下に広がっていく混乱。

「ランプライトを最強にしろ!」
「あいあいキャプテン!」
「上昇!」

船体のランプが閃光を放つ。

113
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目の退化した星喰いに、ランプライトの光は強烈だ。星喰いはその場でもんどりをうって苦しみ始める。
「ワイヤー射出!」
船から幾重にも細いワイヤーが射出される。
「やったか!?」
星喰いの力は強い。
何度も網の中で暴れたあと、ようやく静かになった。

体内から取り出された三ツ星を空へ掲げる。三ツ星はキラキラと空へ昇っていく。
そんなわけで、今日も三ツ星は僕たちのおかげで南の空に輝いている。

Utubo
- 完 -

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