くう君と傘

くまのくう君はお寝坊さんです。朝、目を覚ましたのはりーちゃんが学校に行った後でした。 「今日は雷雨の恐れがあります。お出かけの際は雨具をお持ちください」 くう君は天気予報を聞いてびっくり。りーちゃんの部屋に、ポツンと折り畳み傘が置き去りにされていたからです。 「大変!りーちゃんが雨に濡れちゃうよ」 くう君は折り畳み傘を持って、てくてくお外に出て行きました。 くう君の小さな冒険の始まりです。

熊岡りり

12年前

- 1 -

くう君はぬいぐるみなので、従わなければいけない掟があります。それは、動いているところを人に見られてはいけないということです。 みなさんも、寝る前と起きた後でぬいぐるみの位置が違っていたという経験がありますよね。 この掟を破ったぬいぐるみは心を失い、ただのぬいぐるみになってしまいます。 くう君は誰にも見られないように注意して、電柱に隠れながら進みます。 ところが、ふいに後ろから声をかけられました!

saøto

12年前

- 2 -

「ねえねえ、学校ってどういけばいいか知ってる?」 声をかけてきたのは、ぬいぐるみのうさぎでした。 くう君はホッと安堵のため息を漏らしました。こんな所で人に見られてしまったら、りーちゃんに折り畳み傘を持っていけないどころか、家にも戻れなくなるかもしれないのです。 「君も、学校に行くの?」 「大事な友達が傘を忘れてしまったの。だから届けに。」

- 3 -

「くう君もりーちゃんにお傘をお届けなの!」 「よかった!じゃあ、ミミちゃんも一緒に連れてって」 くう君はうさぎのミミちゃんと友達になりました。 二匹はキョロキョロと辺りを見渡しながら先を急ぎます。でも、風がゴミを転がすだけでも二匹はびくりと、人に見られたと勘違い。 そこで、くう君とミミちゃんは作戦を考えました。 ぴと! くう君は前を!ミミちゃんは後ろを! 二匹は背中合せになって歩く事にしました。

真月乃

12年前

- 4 -

いちにいちに…。 くう君とミミちゃんの 小さな小さな声が 雨の音とともに、 小さく小さく聞こえました。 「もうすぐかな?」 あと、数分。 そんな時、小さな怪獣達の 声がしました。 『あー‼お人形だ‼‼』 くう君とミミちゃんは、 動きをとめじっとしました。 くう君とミミちゃんにピンチが やってきました。

Caneko

12年前

- 5 -

「この人形、傘持ってるぜ」 「いくぜ、必殺ウルトうさぎビーム! ドーン、バゴーン」 「やったな! こっちはスペシャルくまソードで戦うぞー。ザシュッ、ザシュッ」 二匹の怪獣、ではなく二人の男の子は乱暴にくう君とミミちゃんをぶつけ合います。 くう君とミミちゃんは痛くても、じっとされるがままになっていました。 と、そこへ、 「それりーちゃんのくう君だよ! 返してよ!」 泣きそうなりーちゃんの声。

lalalacco

12年前

- 6 -

「へーお前のぬいぐるみだったのかー。尚更いいや、必殺ウサギ一億連打ウサギのロッシーニ春風キャビアソース添え百列連打釘パンチ!!」 「やめて!!返して!!」 泣きながら2人を追いかけるりーちゃん。 「やーい、やーい、泣き虫弱虫ここまでおいでー♪」りーちゃんを挑発しながら逃げる2人。 りーちゃん可哀想・・・。どうにかしてやりたい・・・。でも、ぬいぐるみの僕達ではどうにもならない・・・。 そこへ・・・。

12年前

- 7 -

「やめろwさすがにそれはないww」声の方を振り返ると、りーちゃんのおじいちゃんが立っていました。正義のヒーロー登場です。「しりとりwりぼんww」おじいちゃんの笑いは止まりません。「やべえ奴が来た」とくう君とミミちゃんを置いて、怪獣達は去って行きました。

sexyking

12年前

- 8 -

「おじいちゃん、ありがとう!」 りーちゃんはにっこり笑って、おじいちゃんからくう君とミミちゃんを受け取りました。 「うさちゃんは、さっちゃんのとこのミミちゃんだね!届けてあげなきゃ!」 二匹を抱きしめ、傘を持って… 「でも、どうしてこんなとこにいたのかな?もしかして、傘を持ってきてくれたのかな?だったらうれしいなあ〜」 りーちゃんのそんな声を聞いて、二匹もうれしくなるのでした。

☹hlt

12年前

- 完 -