終わらない黒い童話

物語のその後、気になりませんか? 1、大人になった赤ずきん 2、人魚姫の子供 3、ヘンゼルとグレーテルの店 4、白雪姫と鏡 5、王妃シンデレラ 6、ラプンツェル後継者 7、魔女たちの宴 8、??? 物語は、終わらない。

なつ

13年前

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出展参考 本当は怖いー 「狼」と名付けられた性犯罪者に犯された少女は大人になった。 傍には少女の赤ちゃんが眠っている。 狼から少女を救った、「猟師」と呼ばれる警察官の男との間に出来た子だ。 彼はしばしば暴力的に少女を押さえつけようとするが、根は優しいということを分かっている。その愛情をどう表現していいか、分からないのだ。 「本当はあいつとの間に出来た子なんだろ!」 猟師を少女は今宵もあやす。

aoto

13年前

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出展参考 本当は残酷なー 「何してるの!」 美しい声を張り上げて、人魚姫は今日も息子を抱き締める。 まだ幼いその手は、自身の鱗を掻きむしった事を示す血に濡れていた。 「痛いでしょう? どうしてこんな……」 「だってお母さん、みんな僕を見て化け物だって言うんだ! 僕もみんなと遊びたいのに」 そう言って、彼は母のもとを飛び出した。目指すはかの魔女の場所。 そしてその終末は、再び泡の中へ消えた。

12年前

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出展参加 本当は最悪なー 飢饉の影響で親に捨てられ、森の魔女を殺し銀金財宝を手にいれ、店を構える程の金持ちになった兄と妹。 だが、魔女が居た森に無事にたどり着いた彼らに疑問に思う人もいて、実は妹は魔女ではないかと訴える人も出て魔女狩りとして裁判に掛けられ焼き殺された妹。 そして、兄も実母を殺害と窃盗の罪に着せられ死刑にされた兄。 幸せになるどころか、最悪な結末になってしまった・・・。

12年前

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出展参加 本当は醜いー 継母の死から数年後、白雪姫にはそれはそれは可愛らしい子が産まれていた。 そのまた数年後、やはり白雪姫の子は大層美しく育った。 白雪姫は自らの子の美貌に不快を抱き、毎日鏡に問いかけをしていた。 白雪姫が老いていくにつれ、鏡の返答は白雪姫の子を答えるようになった。 激しい嫉妬にかられた白雪姫は死んだ継母のように林檎を毒の壺に浸し、薬で老婆を装い… 醜い連鎖が始まったのだ。

のくな

12年前

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出展参考 本当は哀しいー ラプンツェルと王子が国へ戻り幸せな家庭を築いているという噂を耳にした魔女は、悔しさに怒り狂う。そしてあの時と同じく、庭の野ぢしゃに魅入られた或る女の実子を奪った。髪の綺麗な男の子だった。 「ラプンツェル、お前の髪を下げておくれ」 彼は伸びた綺麗な髪を塔の窓から垂らし、微笑んだ。魔女は彼の声を知らない。喉は潰されていた。彼が外を知る為の要素は、一つとして無くなった。

miz.

12年前

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そんな、物語を書けだなんて、無茶な。 まず普通の連絡文ですらまともに書けやしないのに、あの人は一体何を考えているのだろうか? 「こんなもんでいっかー」 大きな溜息と共に、私は握っていたシャーペンを机に叩きつけるようにして転がした。 才能ないなりに頑張ってみたし。まあ、ほとんど有名な童話に似せただけなんだけどね。 がたん、とわざと大きな音を立てて席を立つ。原稿用紙を片手に私は教室を飛び出した。

12年前

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二階の廊下を走りながら窓から中庭を見下ろす。深夜の学校は全く見慣れない。あんな外灯あったかしら?冷たい明かりが中庭のコンクリートの地面を照らしてる。そこを人影が奇妙な形で花壇の端まで横断している。 人影?! 中庭に人がいた。あの人だ!見るとこちらを見てニヤニヤ嗤っている。 私は猛スピードで階段を駆け降り、渡り廊下を音をたてながら突っ切り、中庭に到着した。 「宿題は全部終わったのですか?」

cmjk1999

12年前

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いけない子だ、と相手は呟いた。 「書き上がるまで席を立ってはいけないといったろう。罰が必要だね。さあ、これを持ちなさい」 「嫌、放して!」 抗う掌に強引に大きなペンが押しつけられる。私の指は、私の意思に反してそのペンを握った。 地面に落ちた原稿用紙。それ目がけて、手は動き出した。 以来、私は物語を書き続けている。へとへとなのに、手がとまらないのだ。まるであの『赤い靴』の少女のようにー。

misato

12年前

- 完 -