星降る砂漠で

星には寿命がある。

寿命が尽きると
足下にひろがる乳白色のさばくに
そっと降り注ぐ。

無数に散らばった命の尽きた星たちを
青年は一歩一歩やさしく
拾い歩いてゆく。

Savon
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青年が拾いきれなかった星は、だんだんと星の形を失って、いつのまにか姿を留めない光る水に変わって、河を作った。

青年が見落とした星は、だんだんと星の形を失って、気がつく頃にはゴツゴツとした黒い岩に変わって、山を作った。

青年が拾って捨てた星は、だんだんと星の形を失って、パッと消えたように見えた。しかし実際は、目に見えないフロンガスへ転化してオゾン層へ深刻なダメージを与え、南極の氷を溶かしている。

仔羊(えるやん)
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それでも青年は、星を拾い続けた。
彼が拾った星がそんな事態を引き起こしているなんて、まさか悪い方向に物事が進んでいるなんて、一片も疑いを持っていなかったから。

青年は、今日も星の河べりに腰掛けて、空をみあげる。
彼は独りぼっちだったけれど、夜空を眺めればそこにはいつも星たちがいた。星たちはちらちらと輝いて、彼に優しく挨拶をしてくれた。

だから彼は、あわれな星の亡骸を大切に拾い続けた。

cyan
- 3 -

今日も星は瞬いている。少年を慰めているかのように。地球はどんどん汚れていく。新しい資源が発掘される度、人類は墓穴を掘っている。
綺麗な星はそれに似つかわしくない。
砂漠は優しい。時のようになだらかだ。
星も優しい。夜はいつも側にいてくれる。
その両方を失うのは哀しい。
全ては失うためにある。

終にその時は来た。
地球は滅びるのだ。

少年は何も知らずに、自分で作った川べりに寝転んでいる。

- 4 -

仰向けに、星を眺めながら眠りにつく。

青年はその夜、素晴らしい夢を見た。今まで拾い集めた死んでしまった星々が蘇り、空へ還っていく夢だ。
青年は涙を流して喜んで、

目が覚めた。

相変わらず星は光を失い墜落していく。

「君が星拾いか」
星を拾っていると、静かな声が彼を呼びかけた。そこには、悲しい目をした男がいた。
青年は突然の来訪者に驚き、心踊った。
「はい。星を拾っています」

えす
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「そうか。私は、きみの成れの果てだ。」男は彼の前にサラサラと砂を落としてみせた。
「これは私が君くらいのときに拾った星だよ。綺麗だった。今はこんなにも小さくなってしまったがね。」
風が吹いて、やがて星はどこかへ散った。
男と青年ははぽつりぽつりと自分の人生について語った。人と話すのはお互い初めてで、どうしても上手くいかなかった。長い昔話だった。星のように長い寿命を彼らは持っていた。

オム飯
- 6 -

彼らは、生まれた時から一人だった。
最初の記憶の中で、既に星を拾い集めていた。何故かそれが自分の役目だと知っていた。

彼らが知っているのは、星だけ。それ以外のことは何も知らない。
ただ、死んでしまった星達が安らかに眠れるよう、もっと綺麗な星に生まれ変われるよう願って星を拾い続けた。何十年も何百年も一人で、今日まで他の星拾いにさえ巡り合わず。

──宇宙という、星が溢れる広大な世界で。

haduki
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長い長い物語。話が終わった頃には、青年は少年の面影を失い、代わりに寂しさの潜む瞳を身につけた。その間にも、地球は危ない均衡を保ちながら、でも確実に崩壊を始めている。

突然のことだった。男の寿命が尽きた。砂漠にそっと倒れた男を見て、青年は初めて知った。

星拾いもまた、星であったのだ

星拾いにも寿命がある。

寿命が尽きると
足下にひろがる乳白色のさばくに
そっと降り注ぐ。

こりす
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青年は星になった男を拾った。まだ少し光を放って温かかった。

男の話は彼の心を揺さぶった。星を拾い続けてゆく自分の長い時間がこわかった。

そんな青年を励ますように夜空の星が強く瞬く。青年はほぅっと長く息を吐き出した。

もう一度手の中の星に目をやって青年は思う。これからの果てしない日々の中でまた星拾いに会ったら。その時はこの話を伝えよう、と。

青年はまた星を探して歩き始めた。

紬歌
- 完 -

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