カミサマのキャンバス

これは、 世界にまだ生命も大地も空もなく、 どこかにいるのであろうカミサマか何かによって"世界"というものが創られて行く途中の段階の、 世界がまだ真っ白なキャンバスだった頃のお話。

kam

12年前

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はじめに カミサマは筆を取り 真っ白なキャンパスに 眩しくて 柔らかくて あたたかい 黄色とも オレンジとも 白ともつかない 不思議な色をにじませました 優しい声で 「光あれ」 とささやきながら

K5.

12年前

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つぎに カミサマは筆を替えて 光で溢れたキャンパスに 壮大で 力強くて でも、穏やかな 青とも 緑とも 白ともつかない 不思議な色を滲ませました 優しい声で 「水の中に 大空あれ」 海は貴石を散らし、空を眺めた。

tamanegi

12年前

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つぎに カミサマはまた筆を替えて 空と海とが揺蕩うキャンパスに 雄大で 広大で 尊大な 茶色とも 黄色とも 白ともつかない 不思議な色をにじませました 優しい声で 「大地あれ」 とささやきながら

なみだ。

12年前

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さらに カミサマは筆を替えて 空と海と大地が横たわるキャンバスに 鮮やかで 瑞々しく 雫の滴るような 濃緑とも 淡黄とも 青藍ともつかない 不思議な色をにじませました 優しい声で 「芽生えあれ」 とささやきながら

Noel

12年前

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また カミサマは筆を替えて その木々が青々と生い茂るキャンバスに 煌めく数多の点と 全てを優しく抱く ゆりかごのような 金色とも 銀色とも 瑠璃ともつかない 不思議な色を二つにじませました 優しい声で 「天に巡る星と時のやむことのないように」 とささやきながら

Utubo

9年前

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そして カミサマは筆を替えて その星や時の流れるキャンバスに 数多の輝きを 空には空を掴めるように 海には海を掴めるように 赤紫や 青緑や 黄色や 或いは白や黒までつかって ふたつと同じモノのないように 象らせました 優しい声で 「水の生き物よ、海に満ちよ」 「飛ぶ生き物よ、地に多くなれ」 とささやきながら

続木

8年前

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そうして カミサマは筆を置き 一生懸命に今まで描いてきたキャンバスを眺めました 自分のやってきた作業を休み 自身の体を休め 自身の心をも休めました ただただ静かに 見つめます 様々な色達の それぞれの動きを それらがやがて 不思議なハーモニーを かなでる瞬間を 楽しみにされます 優しい声で 「安息は必要だ」 「みんなも時々は休みなさい」 とささやいてから カミサマは眠りにつきました

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カミサマが眠りに就いてから キャンバスに淀んだ色が現れ ハーモニーを邪魔し始めました 安息を求める色は 淀みに飲み込まれ 活発にキャンバスを彩る色は 淀みを追いやる キャンバスのなかで不協和音が奏でられ 美しさを失っていきます カミサマが目覚めたとき キャンバスを見て嘆きました 「色に心が宿るなら戒めを与えよう」 キャンバスを一つの星に移植して カミサマはまた眠りました

8年前

- 完 -