カミサマのキャンバス
これは、
世界にまだ生命も大地も空もなく、
どこかにいるのであろうカミサマか何かによって"世界"というものが創られて行く途中の段階の、
世界がまだ真っ白なキャンバスだった頃のお話。
- 1 -
はじめに
カミサマは筆を取り
真っ白なキャンパスに
眩しくて
柔らかくて
あたたかい
黄色とも
オレンジとも
白ともつかない
不思議な色をにじませました
優しい声で
「光あれ」
とささやきながら
- 2 -
つぎに
カミサマは筆を替えて
光で溢れたキャンパスに
壮大で
力強くて
でも、穏やかな
青とも
緑とも
白ともつかない
不思議な色を滲ませました
優しい声で
「水の中に 大空あれ」
海は貴石を散らし、空を眺めた。
- 3 -
つぎに
カミサマはまた筆を替えて
空と海とが揺蕩うキャンパスに
雄大で
広大で
尊大な
茶色とも
黄色とも
白ともつかない
不思議な色をにじませました
優しい声で
「大地あれ」
とささやきながら
- 4 -
さらに
カミサマは筆を替えて
空と海と大地が横たわるキャンバスに
鮮やかで
瑞々しく
雫の滴るような
濃緑とも
淡黄とも
青藍ともつかない
不思議な色をにじませました
優しい声で
「芽生えあれ」
とささやきながら
- 5 -
また
カミサマは筆を替えて
その木々が青々と生い茂るキャンバスに
煌めく数多の点と
全てを優しく抱く
ゆりかごのような
金色とも
銀色とも
瑠璃ともつかない
不思議な色を二つにじませました
優しい声で
「天に巡る星と時のやむことのないように」
とささやきながら
- 6 -
そして
カミサマは筆を替えて
その星や時の流れるキャンバスに
数多の輝きを
空には空を掴めるように
海には海を掴めるように
赤紫や
青緑や
黄色や
或いは白や黒までつかって
ふたつと同じモノのないように
象らせました
優しい声で
「水の生き物よ、海に満ちよ」
「飛ぶ生き物よ、地に多くなれ」
とささやきながら
- 7 -
そうして
カミサマは筆を置き
一生懸命に今まで描いてきたキャンバスを眺めました
自分のやってきた作業を休み
自身の体を休め
自身の心をも休めました
ただただ静かに
見つめます
様々な色達の
それぞれの動きを
それらがやがて
不思議なハーモニーを
かなでる瞬間を
楽しみにされます
優しい声で
「安息は必要だ」
「みんなも時々は休みなさい」
とささやいてから
カミサマは眠りにつきました
- 8 -
カミサマが眠りに就いてから
キャンバスに淀んだ色が現れ
ハーモニーを邪魔し始めました
安息を求める色は
淀みに飲み込まれ
活発にキャンバスを彩る色は
淀みを追いやる
キャンバスのなかで不協和音が奏でられ
美しさを失っていきます
カミサマが目覚めたとき
キャンバスを見て嘆きました
「色に心が宿るなら戒めを与えよう」
キャンバスを一つの星に移植して
カミサマはまた眠りました
- 完 -
作品情報
カミサマのキャンバス
#11693
- リレー期間
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3年1ヶ月