にゃんとなくDAYS

「喋らない分、人間なんかよりネコやイヌのほうがマシね。」 「にゃー。」 「君もそう思う?」 彼女がくつろいでいるのは俺の部屋のソファ。 彼女に抱かれているネコは俺の飼いネコだ。 彼女は度々アポも取らずに勝手にこの部屋を訪れてはこうしてネコと戯れている。 毎回、俺が何をしていようがお構い無しだ。

ki-ro

12年前

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彼女は本当に不思議な人だ。付き合っている訳でもなければ、幼馴染でもない。友達とも少し違うし、親戚でもない。 彼女はとても勉強が得意なのに俺が勉強をしていても教えてくれない。そして俺からも聞かない。 彼女は学校では図書館で本を読んで過ごしている。地味で友達もいない。 でも俺の飼い猫にだけ心を開くのだ。 「猫が好きなら飼えばいいじゃない」 と言っても、あなたの意見は聞いていないと突っぱねる。意味不明だ

テリー

12年前

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一言で言ってしまえば要するに猫みたいな性格の女ってことだ。 気まぐれ、わがまま、そのくせ寂しがりやの甘えん坊。 人にはつかなくて場所につく。 性格が猫なら見た目も猫。 アーモンド型の眼によく大きさの変わる瞳孔、小さく丸い鼻、ニッとした形の口。 俺、自分ちの猫は大好きだけどよそんちの猫はそんなに好きじゃないんだよな。 だって、なに食わされてるかわかんないし、蚤がついてるかもしれないじゃん。

Noel

12年前

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今日も朝日とともに彼女はやってきた。 ピンボーン 慌てて飛び起きて時計を見る。 まだ4時半だよ。 どうせ彼女なんだろう。 ガチャ …おはよ。 どしたの? …友達に会いに来たの。 どうぞ。 そういうと彼女はなんの躊躇もなく家に入ってきた。 だがあいにく、僕の猫はいま寝ている。 彼女は脇目も振らず猫の元へ寄り、 気持ち良さそうに寝ている猫の頭を撫でた。 猫は、幸せそうに寝ていた。

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普段はあまり表情が変わらない彼女の顔も、少しだけ幸せそうに見えた。 何となく、見ないふりをした方がいいような気がして、俺はそっぽを向く。 もう一度寝よう、と布団に潜り込んだ。 けど眠れない。 そのうち、彼女の寝息が聞こえてきた。 前から気になっていたが、こんな朝早くから出かけてきて彼女の家族は何も言わないのだろうか。 朝だけじゃない。夜だって、随分遅くまでここで過ごすことがあるわけだけど。

misato

11年前

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昼前になってようやく彼女が目を覚ました時、俺は二人分の炒飯をつくっているところだった。 目をこする彼女の目の前に皿を置いてやる。 「なあ、こんなふらふらと男の部屋に来て家の人は何も言わないのか?」 今となっては、なんて愚かなことを言ったのだろうと思う。 彼女は答えなかった。 スプーンを握った手をおろし、哀れなものを見るような目を俺に向けていた。 あの日以来、彼女は来ていない。

ミズイロ

11年前

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彼女が来なくなってから、ずいぶんと経った。 彼女の友達である俺の猫といえば、ただただのんびりと過ごしていた。今だって日向の暖かい所で気持ち良さそうに眠っている。もともと来たり来なかったり、変則的な彼女ではあったが、一ヶ月以上も姿を見せないことはなかった。 心配になった俺は休み時間に、学校の図書館へと向かった。 「……何」 本に目を落としていた彼女は、冷たいくらい平坦に言う。 「あのさ」 俺は

トウマ

11年前

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そのまま隣に座って、入り口横の棚にあった聞いたことのない名前の作家の、とにかく読むのに時間がかかりそうな本を開いた。 「何か用?」 答えず文字を追い続ける俺に呆れたような顔をして、彼女はまた視線を手元に戻した。 どうやらかなり昔の作品のようで、読書らしい読書をしない俺には難しすぎる。 短い休み時間を使って読み終えるには、何十日とかかるかもしれない。けれど、いつか慣れるだろう。

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「また会いに来てくれよ、お前の友達に」 文字の羅列を目で追いながらさりげなさを装う。 沈黙に息が苦しくなった頃。 「……分かった」 ぽつりと呟きが聞こえて俺は彼女の方を向いたが、彼女は何事も無かった様に本を読みふけていた。 そのあまりにも飄々とした態度に俺だけが疲れたみたいで、溜め息をつくと。 「友達の友達もまた友達」 「え?」 「……ってあの子が言ってた」 にやっと猫みたいに笑った。

ゆりあ

10年前

- 完 -