残り7割からの脱出

Aさんがきらい

Bくんがにがて

みんな、
みんなそう言うの。

でも、本当にそう思ってるのは言ってる人の3割で、
残り7割は、ただ便乗してるだけなんじゃない?

そして私は、その残り7割が

大嫌いだ。

- 1 -

言い換えれば…

Aさんがきらい

Bくんがにがて

…と言うみんなのうち、
3割は自分の気持ちに正直に
生きている。

それの善し悪しは一先ず置い
ておくとしても、彼らは明確
な立場にいる。

それで?

正直に生きられない7割が嫌
いなあなたは3割の正直者?

それとも──

おやぶん

- 2 -

「もうよそう_」パタン_

日記に書くようなことじゃない。昨日も今日も楽しく有意義に過ごしたのに、日記を開けば、まるで別人の日記になっている。

視線を十度下に向けて、しばらくボーっとしていた。不意に、レンズの隙間から何か光って見える。

?

指輪…のおもちゃだった。

瞬時に蘇る記憶に、思わずニヤけてしまう。
そういえば、あの時もアザだらけの顔して言ってたかも…。

フッと日記をさかのぼった。

初心の素人

- 3 -

「ほんとあいつマジ暗いよね。私ああいう協調性のない人嫌なんだけど。」
「ねー。こっちが気を遣って話しかけても『はい』しか言わないしさー。」
「そうそう!全然会話続かない。しかもあいつ急に泣き出したんだよ。」
「えっうそ泣いたのー?!」
「うわ最悪。泣くとかマジありえんわ。」
「なんか私達がいじめてるみたいじゃん感じ悪いー。」

お昼休み。悪口を言われているのはKさん。
この指輪は彼女からもらった。

sabo

- 4 -

Kさんとは、同じクラス。おっとりしているが、根は良い子だ。

「え、何何。Kさんの話?あの子さー、親が家出てったらしいよ」
「えっ、じゃあ今誰と暮らしてんの?」
「さあ、知らない」
「だからあんな協調性無いのかな?」
…

周りの女子も会話に加わり、家の悪口まで言い始める。誰と暮らしてるか知らないということは、きっとただの噂なんだろう。
…ムカつく。そういう人間が大嫌いだ。

「やめなよ」

白アスター

- 5 -

私の口から出た言葉に女子たちが面くれる。
「なにか言った?」
リーダー格の女子が訊いてきた。今否定すれば許してやるという事だろう。

「言ったけど?聞こえなかった?」
臆することなく私が言った皮肉に、クラスがシーンとなる。

ガラっ
丁度なのか運悪くなのか…そこKさんが戻ってきた。
図らずも渦中の人となった彼女を皆が凝視し、Kさんは気まずそうに目を逸らす。

「今この子がKさんの悪口言ってたよ」

鶴之龜子

- 6 -

躊躇なく私は事実を話した。

「...そうなの?」

きょとんとした顔で聞き返すKさん。リーダー格とその仲間は、ニヤニヤした顔を浮かべている。

リーダー格の女が答えた。

「違うわよ?大体、さっき悪口言ってたのは、この子なんだから」

そう言って私の方に視線を移す。この子、とはやはり私のことだった。

どうやら、今度は私が標的とみなされたらしい。

「この子、本当はあなたのこと嫌いみたいよ?」

しとっぴ

- 7 -

Kさんが探るような目で私を見つめた。
突然の展開に私は動揺してしまった。
ああ、これじゃ、本当に私が彼女の悪口を言っていたみたいじゃないか。

Kさんはプイとそっぽを向いて教室を出て行った。
「みんな言ってることだし、気にしなくてもいいよ。Kさんが悪いんだから」
二枚舌が辛かった。口では敵わない。
でも、私は7割の中に入りたくはなかった。

私はKさんを追いかけた。Kさんは涼しい顔で私を見た。

aoto

- 8 -

生気が感じられない瞳だった。

彼女の前では、弁明も励ましも共感も慰めも全て、滑稽に思えた。

私は、彼女にかけるに相応しい言葉を持たなかった。

私が彼女の瞳を見つめていると、

ぽろっ。

雫がこぼれ落ちる。
次から次へと。
それは俄かに、噎び泣きに変わった。

突然の出来事に、私は慌てるだけだった。

「Kさん!?ごめん…!」

彼女の唇がゆっくりと動く。

「ありが…と……」

梨小畑

- 完 -

作品情報

残り7割からの脱出

#12047

リレー期間

1年3ヶ月