高嶺の花は瓶の底

わたしはモテる。らしい。 高校生になってから急にモテている。 なぜか今月だけで三人告白された。 その理由がわからなくて、直接聞いてみた。 「や、なんかさ、安内っていっつも笑ってるじゃん?だから楽しいなって。それにほら…なんか丸顔で子供向けアニメのキャラっぽいし」 おい最後。バカにしてんだろ。 「高嶺の花じゃなくってさ、ちょうどいい感じの可愛さなんだよ」 それ喜んでいいの?泣けばいいの?

森野

13年前

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しかし告白されて調子に乗るところだったが、私より女子力の高い美人なんて、いくらでも居るだろう。 私は相手が男でも女でも、顔を見てニコッと微笑む癖がある。高校生活が始まったばかりで皆緊張している時に、私という気さくな存在が調度良かったのかもしれない。特に、男子にしてみれば。 美人といえば、もっとそう、例えば… ぞくり。 視線を感じて振り向くと、そこにはハッとする美人が腕を組んで立っていた。

斉藤紺

13年前

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「すご~い人気者じゃない。モテるんだね~羨ましい~」 彼女だから。 彼女だから私はその言葉の裏に隠されている棘を感じてしまう。 『男に媚売ってんじゃねえよ。ブスのくせに』 多分こんな事を心では言っているんだろうと思うと萎えてしまう。 彼女、遊佐万理江はあり得ないくらい美しい。ただ、天は二物を与えずというのは彼女の為に有る様な言葉で、その顔の美しさに反比例する様に性格は醜い。

13年前

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勿論、彼女を好きだと言う男子がいない訳ではないが、その理由というのが皆、顔や性格が何処ぞのアニキャラに被っているからというマニアックな奴らしい。 だが、彼女はそんな事も知らず、自分の美貌で男共が寄って来ていると思っているのだから呆れたものである。 「別に。大した事はないけど」 「そうよね〜、亜紀からしたら男子の一人や二人、振った所であり余ってるものね〜」 あ〜ウザ…。 早く向こう行けっての。

hyper

13年前

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思わず感情が顔に出てしまった。 嫌な顔をした私に、万理江は美しい顔を歪め、吐き捨てた。 「…せいぜい短いモテ期を味わうことね。いい気になっていられるのも今のうちよ」 お決まりの負けゼリフを残して万理江は、私の前から去った。 今の私には異性を惹きつける魅力があることに、私はその時初めて優越感を覚えた。 …けれど。 万理江の不吉な予言の通り、翌日から私の毎日は、少しずつおかしくなりはじめた。

13年前

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「おはよー♪」 「ぁ…う…ん、おはよ」 あれ…?何かよそよそしいなぁー。 「きのう、帰りに行けなかったクレープ 今日行かない?」 「ぁ…あ、そうね、えーっと今日はごめん」 何だろ、妙に違和感を感じた。 放課後、廊下に出ると、男子達が何か見る目が違う… 冷たい視線と言うか? 「ねー?どしたの?何かあった?」 「てか、宮内さ、やばくね? あれはないだろ⁈」 「?」キョトンとする私に言った一言… え?

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お前いいヤツだと思ってたのにな。 そこまで聞いても何を言われてるのか解らずただ心臓がバクバクと高鳴った。 人には秘密の一つや二つあるものだ

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(なんで??いつ私の裏の姿を見られたの?!それに、あの時にケンカ売ってきたのはあいつだし!!) 私の頭はパニック状態。 でも、それを男子に見せたら終わりだ!! 「え?何言ってるの?嘘はやめてよ!!」 すると男子達は.............. 「嘘言ってんのはお前だろ??」 私は、段々血の気が引いていくのを実感した。 すると、逃げ場のない私の前に現れたのは...

12年前

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「何騒いでるの!」 現れたのは風紀委員で学年一地味なガリ勉瓶底メガネの鈴木玲子 物陰から万理江も現れほくそ笑んで玲子に告げた。 「安内さん本性暴かれてキレたらしいよ?」 瓶底メガネの奥で目が光る 「本性?隠すもん一つや二つ誰しもあるんじゃないの?あなたはないの?」 メガネとダサい三つ編みを取ると強く美し過ぎる瞳に男子の心は残らずさらわれた。 私のモテ期は終わり万理江は存在すら忘れられたとさ

- 完 -