オカルト趣味も行き過ぎに注意

「ねぇ、心霊スポット行こうよ!」

オカルト好きな彼女が
目を輝かせて言った。

「…ほら、課題終わらすよ」

「スルーしないでよー!」

「遊び半分で行っちゃダメなんだってー。そうゆうの。大学生にもなればわかるだろ?」

「わかるけどぉ。ホラー映画は見尽くしたし暇なんだもん!霊感もないし!ね?お願い!祥平~車だしてよ~」

この時、俺は無理にでも
止めれば良かったんだ。

安田

- 1 -

車を走らせること30分。
旧国道は対向車の一台もなく、ヘッドライトの範囲以外は闇でしかない。

「着いたぞ」

そこは、地元では割と有名な心霊スポット。
ツルハシの跡も生々しい、小さな隧道だ。

「うひょー雰囲気あるねぇ」

彼女の声が反響し、隧道に吸い込まれて消えていく。

「ねえ、祥平。行こ?」

ちょっと首を傾げる仕草が…ちくしょう可愛い。逆らえない俺は、差し出された彼女の手を取った。

Hydrangea

- 2 -

車から降りて、三歩。足が重たくなった。
「なんか、足が、重くないか?」
「何言ってるの?祥平恐くなったの?やだなあ、ほらほら、行くよ」
彼女に引っ張られ、ずるずると足を引きずるように進む。

やばい。おかしいな、俺、霊感なんてないはずなんだけど。でもなんなやばい。虫の知らせ?わかんねー、鳥肌たってきたし。

でも、彼女は意気揚々と俺の手を引っ張って行く。

無理にでもここで帰ればよかったんだ…。

- 3 -

「うわ、なにこれ」

ふと彼女が下を見た。そこにはいつ置かれたのかも分からない、枯れてほぼ原型を留めていない花束があった。ここで人が死んだらしい。

「戻ったほうがいいって」

俺の忠告には耳も貸さず、また彼女は歩き出す。歩を進める毎に俺の足はどんどん重くなっていく。

「なあ、もう戻ろう」

しかし彼女は答えない。さっきまであんなにはしゃいでいた彼女が。
彼女の様子が明らかにおかしくなっていた。

ツナ缶

- 4 -

彼女は俺の言葉に見向きもせず、ただ何かに取り憑かれたかのように歩を進めて行く。

もうずいぶんと歩いた。

「なあ、もう帰ろう。これ以上は危ないよ。」
俺は必死で彼女を止めようとした。

言うことを聞かず彼女は進んで行く。

「もうついて行けねぇ、先戻ってるわ。」
そう言って、車に戻ることにした。

のだが、

田中太郎

- 5 -

車のところに戻ってみたら助手席に誰か座っているじゃないか。
慌てて走り寄ったらそれはさっきまで一緒に居たはずの彼女だ。
なんだかんだいって怖くて戻って来たのだろうか それにしても一体いつの間に俺よりはやく辿り着いたのだろ。
確かに彼女は先に進んでいったよな。
俺は疑問を胸に運転席のドアを開けた。

ブルータスお前もか!

- 6 -

ほんの出来心だったの。

「着いたぞ」

隧道に着いたらとても嫌な気持ちになって、すぐに帰らなきゃって思った。
思ったのに。
『祥平』
呼んだ言葉は音にならなくて、いつの間にか外へ出た祥平の隣に私がいたの。
叫んでも届かなくて、祥平は向こうの私と行ってしまった。
もうだめ。いつの間にか体も動かない。

ヒタリ、

私の目に見えたのは…

「い、いやぁぁアアアア!!!!」

私は、死んでしまった。

けあき

- 7 -

幾つも見えた人の顔らしきモノはどれも、燃えるように歪んでいた。纏わり憑かれて私は──引き剥がされ…た?

分からない。でもそうとしか考えられない。

私の体はずっと助手席にある。なのに、祥平は私…に見えるモノと隧道へ歩いて入った。

祥平が車に戻ると、私の体は言った。

「待 っ て た よ」

私は離れてここにいるのに、祥平の隣に座る体が勝手に。

車が走り出す。

──ダメ!
祥平…祥平…!!

Pachakasha

- 8 -

「…なぁ、あれから何年経ったっけ?」
紅茶の入ったカップを片手に祥平が私に話しかけた。
「あれって?」
「ほら、あのトンネルの」
「ああ、あれね…。忘れちゃった。だいぶ昔の事だし」
「そっか…」
そう言うと祥平は、カップの紅茶に口を付けた。

「なぁ、俺たち幸せだよな?」
「どうしたの?いいじゃん。二人で過ごせてるんだから」

あの日を境にあの世暮らしだけど…。

私たち、これでもいいよね。

minami

- 完 -

作品情報

オカルト趣味も行き過ぎに注意

#614

リレー期間

8ヶ月