「…血が騒ぐぜぇぇえ!!俺の真っ赤な血がなぁぁ!」 「……?」 「視える…視えるぞ!浄化された世界!!さぁ!目覚めよ!俺の内に眠る、blood_type_A!」 そう言って、変なポージングで固まるクラスメイトが一人。 「…………いや、血液型の話はいいからさ。さっさと掃除しようよ」 はぁ。なんでこんなのと二人で掃除なんか。 ウザい。 『カルピス、水割りで』 って注文する奴くらいウザい。
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「何だよ。俺の血液型に興味ねーのかよ」 「ない。全くない。掃除して」 「blood_type_Aが目覚めたから俺にはこの教室は浄化されて見える。よって掃除の必要なし」 「うっざ」 こいつがA型なんてありえない。やっぱり血液型って当てにならない。まぁただの集計結果だから当てはまらない人がいて当然なんだけど。 かくいう私も実はB型だったりする。結構真面目だからよくA型だと言われる。
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大体血液型認知度がこんなに高いのって日本くらいのもんだって聞いたことある。外国人からしたら血液型占い?what?状態だろうな。 日本人の統計から見て一番多いA型を典型的日本人、少ないAB型を天才って言ってるだけでしょ。じゃあAB型の多いヨーロッパは天才だらけじゃない。 そんなことより掃除だ、掃除。 「て、お前な!角っこも掃けよ!四角い部屋を丸く掃除すんな!ちょっと貸せ!」 はぁ?!
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「はあ、もうこれだからB型ってやつは...」 とかボヤきつつ、こいつは丁寧な手つきで埃を掃く。 「見ろ。こんなにゴミ落ちてんだろ」 まん前に突きつけられたゴミ屑に私は怪訝な顔をする。 つかなんで私がB型だって分かってんの、こいつ? 「あと、ほれ」 私の肩についていた埃をぱっぱっと払ってくれた。 私の顔がかあーっとなるのを感じた。 A型の特徴。 几帳面、世話焼き、真面目etc...
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「あ、ありがと…」 高鳴る鼓動。紅潮する頬。 これはもしかして、恋の始ま…。 「フゥーハハハッ!高尚なるblood_type_Aの持ち主である俺がっ!貴様のようなB型女子の貧相な肩からゴミを取ってやったのだ!有難く思うがいい!」 始まらなかった。 「…うっざ」 「ん?」 「何でもない」 男子というものは単純な生き物だと思う。 特にこいつは。 もしやblood_type_Aの副作用なのか?
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「フッフッフッフ」 いきなり笑い出したぞ。やはり少しおかしい。 「フッ、そういうことか。貴様、俺のことを意識しているんだな」 「は⁉」 にんまり笑みを浮かべるウザすぎA型男。 「しかし困った。俺はB型などには興味ない」 ……どうして好きでもない人にバカにされないといけないの。 「違うってば。好きじゃないから」 「女子はすぐそう言う」 もう取り合うのはやめよう。勘違いA型男は無視するのが一番。
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だけどやっぱり血がどーのお前がどーのうるさくて。 「あーもーほんとうるさい。私はA型なんて興味ないの。好きになるなら天才肌のAB型」 と、いうことにしてさっさと終わらせてしまおう。この話題も掃除も何もかも。 と、思っていたら。 「…え、お前、ABタイプなの?え、ちょ、てかお前まさか、好きな奴、とか、え、うそ」 なんていきなり真剣な顔で奴がパニクり始めるから。 私もギョッとしてしまうワケで。
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「そ、そうよ。私はA型とか全然タイプじゃないから。そもそもA型って人数多い癖に自分たちのこと真面目とか言っちゃって恥ずかしいよね!」 「そんな事言ったら俺だって!Type-Bなぞ眼中に無いわ!下賤愚劣蒙昧の愚衆めが!貴様らType-Bはそもそもなぁ!」 「誰がいつあんたの好きな血液型きいたのよ!勝手にしゃべり出すな」 ……小学生か、私達は。 お互い、なにをこんなにムキになっているのやら。
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「佐藤さんB型なの?」 振り返ると人気者の香山君が立っていた。 「ね、AB型が好きってほんと?」「いや、あたしは…」 「俺占いとか信じてなかったけど、信じてみようかな」「え?」 香山君は爽やかな笑顔で囁いた。 「俺AB型なの」 と、そこへ。 「お前らばっかじゃねぇの?血液型占いなんてなんの根拠もねぇし」 そうなの?と意味あり気にニヤつく香山君は、ウザい。 不機嫌なA型男は、少しだけウザくない。
- 完 -