「高橋くん、おはよう」 「あ、相沢さんおはよう…」 今日も廊下ですれ違うのにまた連絡先を聞けなかった。 彼女は隣のクラスの相沢 花。 入学式の時、俺が落とした消しゴムを届けてくれてときにいわゆる一目惚れをした。
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俺は、はっきりいって特徴のないやつだ。個性がない、ともいうだろう。 かっこ良くもないし、かといってブスではないと思う。 勉強も普通、スポーツも普通、僕には自分の誇れるところがない。いや、見つからない。 それにくらべ、相沢さんは、すごく可愛い外見に、勉強もできて、完璧人間だ。
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こんな平凡な僕でも、やっぱり恋はするもので相沢さんに密かに好意を寄せていた。 好きだ。なんて言ったら優しい彼女はきっと遠回しに断りの返事をするだろう。 だけど、最近思うのだ、このままでいいのか...?
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告白はやっても後悔してやらなくても後悔する。なら告白した方がいいじゃん。 僕は決めた。相沢さんに告白しよう。 失恋したっていいじゃん。僕が相沢さんを好きなのは事実だし、その気持ちは大切にしたい。だったら大切な気持ちを彼女に伝えた方がいいんじゃないかな? 相沢さんがどうするかは彼女次第だし、それは尊重しなくちゃいけない。 問題はどうやって告白するかだね。 なんたって僕は彼女の連絡先も知らないからね。
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そこで、古典的ではあるが、確実な方法を使うことに決めた。 そう、下駄箱に呼びたしの手紙を入れるのだ。出席番号くらいは分かるしね。 「相沢さんへ 伝えたいことがあります。放課後、体育館裏に来てください 高橋より」 やることなすこと全部平凡、その上、呼び出す場所までありきたりとは。 これは一周して、よくあるマンガみたいに成功……するわけないか。 それでも、少しだけ淡い期待をする。
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放課後に体育館裏で待っていたが、彼女は現れない 彼女は優しい人で断るとしても絶対に無視はしないはずだ。なのに、彼女は来ない だんだんと不安になってくる 教室から体育館裏に来るのに事故が起きるわけがない ならば、下駄箱を間違えたのか? 周りを見渡すと真っ赤な顔だけを覗かせた相沢さんと目があった
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「高橋…君だよね」 私を呼んだのは。顔を覗かせたまま相沢さんはそう尋ねる。 僕は慌てて精一杯な笑顔を浮かべて強張りながら頷いた。 その笑顔に相沢さんも微笑んでくれた。 静寂が訪れる。 言え、言えよ。自分。 心臓の音が体に響く。 「なんか緊張…しちゃうな」 「え?」 「私、告白されるんでしょ?」 結局向こうから話を振られる事になった。 何て言い出そうか困ってたから助け舟になったけど。
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「は、はい!僕は相沢はんの事がす、好きです」 相沢はんってなんだ、なんで京都弁? 「そ、そうなんだ。」 よかった、スルーしてもらえた。 「そそそれで、なんで私のこと好きになったの?」 「それは!あの..その...」 「ひ、一目惚れ、なのかな?入学式の日のアレで」 「!?...はい!」 なんでそこまで分かるんだ、超能力かなにかか?もはや助け舟とかいうレベルじゃねぇ!
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「ふーん、一目惚れねえ」 な、なんだ?! 高圧的な態度になったぞ!? 「あなたもどうせ、私の顔や表面の性格で好きになったんでしょ?」 そこでふっと寂しそうな顔になる。 違う、僕は、 「僕は!その顔を笑顔にしたいって思ったんだ!何でそんなわかったような顔して、勝手に決めつけて…僕はただ、ただ、君を…」 「そっか…うん…はい、これ、私の連絡先」 彼女の顔が、僅かにほころんだ。
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