ニジイロサカナを知っていますか?

ニジイロサカナを知っていますか? 虹色に輝くウロコを持つ世界一綺麗な魚です。 以前はウロコを他の魚に自慢するだけの意地の悪い性格だったので、みんなの嫌われ者でした。 しかし、ふとしたきっかけで心変わりをし、みんなにウロコを分け与えるようになりました。 仲間ができたニジイロサカナは前より美しくないけれども、とても幸福でした。 そして、残りのウロコはあと僅かとなっていました。

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「やぁニジイロサカナ!見て、君からもらったこのウロコ、とってもキレイだろ?」 灰色のウロコの中に一枚、揺らいで一際輝く虹色。ハイイロサカナはくるりと一回転してみせました。 ニジイロサカナは嬉しくなりました。 ニジイロサカナは、自分と同じ魚を見たことがありません。ウロコを分け与える事で、仲間が出来たような気がするのです。 ニジイロサカナは思いました。ウロコは残り五枚。まだ仲間が出来ると。

おちび

9年前

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「ありがとうニジイロサカナ!君のおかげで俺のかっこよさに磨きがかかったよ」 アカイロサカナはキメ顔で礼を言いました。赤いウロコの中に一枚異色を放つ虹色の小さなアクセント。色彩の煌びやかさが強調され、豪奢に見えます。 ニジイロサカナは嬉しくなりました。ニジイロサカナのウロコは他のサカナたちを美しく飾りたてることができるのです。 ニジイロサカナは思いました。ウロコは残り四枚。まだ仲間が出来ると。

aoto

8年前

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「ねぇ見てよニジイロサカナ!このピカピカのウロコがあれば、もう海溝だって怖くない」 ミズイロサカナは貰ったウロコのある額を撫でました。これがあれば、海をまたがる真っ暗闇の急斜面も明るく照らします。 ニジイロサカナは嬉しくなりました。ニジイロサカナのウロコがお日様よりも頼もしく光るお陰で海底も安全に渡ることができるのです。 ニジイロサカナは思いました。ウロコは残り三枚。まだ仲間が出来ると。

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「ありがとうニジイロサカナ!あなたのウロコのおかげで、私結婚することになったの」 クロイロサカナは体を横に向けて、黒に混じる七色の煌きをみせてきました。単調でくすんだウロコの中で、虹色の色彩はとても魅力的に映ります。 ニジイロサカナは嬉しくなりました。ニジイロサカナのウロコが、醜いと言われ続けた彼女の人生を変えたのです。 ニジイロサカナは思いました。ウロコは残り二枚。まだ仲間ができると。

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「見てみて、ニジイロサカナ! あなたのおかげで僕、2匹目の友達ができたんだ!1匹目はあなただけどね!」 小さなムラサキサカナは虹色をきらめかせながら水中で一回転しました。毒があると誤解を受けるこの色も、今では小さな虹の美しい引き立て役です。 ニジイロサカナは嬉しくなりました。ニジイロサカナのウロコが、また1匹救ったのです。 ニジイロサカナは思いました。ウロコは残り1枚。最後の仲間だと。

Blue Bird

6年前

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残り一枚。 ニジイロサカナはその場でくるりと回り、虹色に煌めく自分のウロコを確認します。 美しさは失くしてしまったけれど、素敵な仲間がたくさんできました。ニジイロサカナは次の仲間の喜ぶ顔に想いを馳せ、馳せて、 けれどふと、悲しくなりました。 ニジイロサカナは思いました。最後の仲間ができてしまったら、ニジイロサカナに虹色のウロコがなくなってしまったら、自分にはもう、新しい仲間ができないのかと。

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ニジイロサカナのそんな様子を見ていた仲間の魚たちは、自分たちがニジイロサカナに出来る事はなんだろう、と思いました。 そうだ。ニジイロサカナと同じことをしよう。魚たちは話し合って、夜寝ているニジイロサカナにそっと近づきました。 次の朝、ニジイロサカナは水面に映る自分の姿を見て、驚きの声をあげました。そこには、色とりどりのウロコを持つ美しい魚がいたのです。 ハイイロ、アカイロ、ミズイロ…

6年前

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虹の七色よりも、ずっと沢山の色。 ゆらりと背鰭を、尾鰭を、胴をくねらす度に、とりどりが白い砂にきらきら照り映えます。 すごい、すごいや! 嬉しくて嬉しくて、ニジイロサカナはくるくる踊りました。仲間に有難うを伝えよう。 今日もどこかで、ハイイロ、アカイロ、ミズイロ… 大きさも色も違うカラフルな群れが楽しく踊っています。 共通点は、一枚の虹。 ニジイロサカナを知っていますか?

- 完 -