空からうさぎが降ってきた

ある夜 満月がパックリと 割れた 夜空を見上げた俺は… 目がてんになった どうなってんだ──

yui

13年前

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割れた満月の裂け目から、大量に降ってくるのだ---ウサギが。 白いのから黒いのまで、ばらばらとそこらに降り積もってゆく。 唖然としていたら、まだら模様のやつが俺の頭に直撃した。痛い。 しかし、そのお陰で少しだけだが冷静を取り戻すことができた。 「な、なんでウサギが降ってくるんだ!?」 「あれー、悠麻くん知らないの?」 背後からやってきたのは、同級生の剛だった。 …何故か、傘をさしていた。

Rikotto

13年前

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知らないのー、と言われても。 知らないから唖然としたわけだ。 というか、剛は知ってるのか? 「かぐや姫が行方不明だとかで、総動員してんだよ。ニュースで言ってた」 ……はあ? かぐや姫? 今は昔、竹取の翁がなんたらかんたらの、あのかぐや姫、の、ことだよな?

13年前

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「天気予報もかぐや姫のお陰で明日はうさぎが降るってさ」 それで傘をと頷きかけて、はたと我に返る。そんな訳ないだろうと否定しようにも、ウサギがそこいら中に転げ落ちてくる。 ぼいん、と頭に乗った一匹を鷲掴んでまじまじと見つめる。 「放して下さいってば、姫さまを探しに行くんですから」 もふもふした毛皮が喋るだろうか?否、俺は夢を見ているの違いない。 そうこうしているうちにウサギたちが集まってくる。

cider

13年前

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「姫様を知りませんか?」 「姫様を知りませんか?」 甲高い声の大合唱。 「かぐや姫っつったら、竹林の光る竹ん中だろっ!」 頭がおかしくなりそうで思わず怒鳴りつけたら、大量のウサギたちは一斉にどこかへ走り去っていった。ああ、助かった。 どうにか家に帰ってきた俺は思わず膝から崩れ落ちた。暗闇の中で、うちの裏山の竹林から、隠しきれない光がこうこうと溢れ出している。 もしかしなくても、あの中だ。

lalalacco

13年前

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かぐや姫は絶世の美女として伝えられる。男なら興味がわかないわけがない。俺は竹やぶをかき分けて、光の源へと歩んだ。 しかし不安もある。あそこにいるのは赤ん坊じゃないのかと。 だがその心配はなかった。まもなく、光の中で気絶している美女を発見したのだ。 長く艶やかな黒髪にみやびなお召し物。かぐや姫その人に違いない。 俺は優しく、かぐや姫を両手のひらの上に乗せる。 どこかに打出の小槌も落ちてないか?

saøto

13年前

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なんてゆってる場合で無かった。手の上の姫様は生き絶え絶えではないか! すると、小さな声で姫様が何か呟いた。 俺は直ぐ様、姫様の言った様に行動した! 光り輝く竹の中に姫様を戻し、 俺は一瞬躊躇いながらもご命令のままにそこに熱湯を注いだ! そして、蓋をした… ・・・3分が過ぎると… 「シュワッチッ!」 叫び声と共に等身大の絶世の美女が飛び出して来た! 「かぐや姫バニーガールモード!見参!」

真月乃

13年前

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あわゎ…。ビックリしたなぁ! あまりの驚きに腰を抜かしていると、 姫様は 「本当に助けていただきありがとうございました、 ちょっと下界が懐かしくなり覗いていたところ、手を滑らせ落ちてしまい…。」 そうか、いや…それどころじゃないって… 月からうさぎが大量発生して、姫様探ししてんだよー、 姫様急がねば!とナイトを気取り颯爽と手を取りうさぎの元へ連れて行こうと… あれ?姫様嫌そうに動かない。なぜ?

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背後には大量発生したうさぎたちが待ちかまえていた。 「姫様」「姫様」「姫様」 「姫様」「姫様」「姫様」 ひょこひょこ飛び跳ねている。 あー。わかるわー。 「そなたに問題を遣わしたい。この溢れかえるうさぎたちを振り払い、私に麗らかな下界を献上してくれませんか」 これは大臣に出したかぐや姫の難題ってやつだな。 「是非とも、貴方に案内してさしあげましょう」 俺はかぐや姫の手を取り、走り出した。

aoto

12年前

- 完 -