8000人近く殺しました。 7歳の頃、始めて銃を持ちました。 8歳の頃、始めて人を殺しました。 9歳。スナイプの技術を買われ、待遇が良くなりました。それ以来、死体は口にしていません。 10歳になり、始めて戦場に立ちました。そこで6人殺しました。 11歳。6歳上の兄が、生きているのを知りました。武器の扱いが飛び抜けて上手く、1人で小隊を潰したそうです。でも敵なので、僕は引き金を引きました。殺した。
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12歳。この頃から呼吸するように人を殺せるようになりました。求められるがままに人を殺す日々…。 13歳。どこかで恨みを買ったのかもしれません。いつでも誰かに見られている感覚…そういうときは気配を探って見つけて殺します。 14歳。味方に撃たれました。いや…味方なんて初めからいなかったのかもしれない。一発脚に食らいましたが殺られる前に殺りました。 15歳。雇われていた組織を潰しました。殺した。
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16歳。変な少女に会いました。「貴方に人を殺してほしくない」なんてことを言う少女です。殺せというのはよく言われたけど殺すなといわれたのは初めてでした。他の奴らは全員殺したけど、なんとなくその少女は見逃した。少女は泣いていた。 17歳。相変わらず戦場に立ち続けました。死神と呼ばれていることを知ったのもこの頃でした。間違ってもないと思いながらそれを教えてくれた男を殺した。 18歳。少女と再会した。
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少し大きくなっていました。戦争反対のグループに入っているらしく勧誘されました。だけど嫌だったので足元を撃ち「関わるな」と言いました。怯えながら逃げていきまた泣いていました。 19歳。暗殺組織を設立しました。仕事上、大人数で殺らなくてはいけなくて折角なので立ち上げました。今は10人程度。元は23人でしたが腕が悪かったので殺しました。 20歳。子供を5人買いました。今、殺しの技術を叩き込んでいます。
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21歳。子供のうち2人が訓練に耐えきれなくなった、と逃げ出そうとしたので、残りの3人に殺させました。 順調に育っていって嬉しいです。 22歳。組織が大きくなって、人数は40人。依頼の数も増えました。組織が大きくなると、知らないところで、内部抗争が起こるので、面倒だから、闇討ちをして、テキトーに20人ほど殺しました。 23歳。隣の国のトップの暗殺依頼が来たので、隣の国のトップとその妻子を殺しました。
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24歳。ある日、部下からとある通信を傍受したと連絡を受けました。 それは、昨年トップを殺した隣国からで、殺した奴らに報復するというものでした。即ち僕の事を言っているのですが、やれるものならやってみろと気にも止めませんでした。 25歳。ある日突然、一発の弾丸が僕の頬を掠めました。 僕は直ぐに、わざと外したのが分かりました。しかし、誰が何処から狙っているのかは全く見当がつかず、少しイラっとしました。
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26歳。時折、初めて銃を手にした時の事を思い出す事が増えました。その時は決まって、8歳まで口にした、記憶に染み付いた死人の味が口の中に広がりました。 それと同じ位の間隔で僕を掠め続ける身元不明の弾丸の主は、不明のままです。 その主は、まさか…という思いがありました。 27歳。その思いは、間違いでした。 抗争に巻き込まれた死体の中に、大人になった、あの少女がいました。 掠める弾丸は、まだ止みません。
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28歳。とうとう掠める弾丸の主を突き止めました。『チェルシー』というらしいです。僕は早速その娘を探しに行きました。 まだ弾丸は掠めています。 29歳。 チェルシーとは、あの少女でした。 正確には、僕が見た死体はその少女の双子の妹でした。 少女は、美しい女に育っていました。泣きながら銃を構える彼女が、すごく綺麗に見えて。 僕も、彼女に銃を向けます。 気がつけば、僕も、涙が出ていました。
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酷く驚きました。涙を流すのは、生まれて初めてでしたから。 初めて銃を握った7歳の頃から実に22年間、銃弾が飛び交う日常の中で、果たして僕は何を得たのでしょうか。 僕はわざと外したのです。もう、終わりにして欲しかった。僕をこの異常な日常から救って欲しかった。 チェルシーは驚いたような、悲しそうな顔をして、動かなくなった僕に駆け寄りました。 何か叫びますが、僕にはもう聞こえません。
- 完 -