モグラとジャッカル

光?光ってなんだろう? もぐらは光がどういう物か知らなかった。何故なら、もぐらの生活は全て真っ暗だ。 暗い土の中しか知らないもぐらにとっては光というがわからなかった。 光は熱いの?痛いの?おいしいの? とうとう好奇心が抑えきれなかったもぐらは、上へと上へと地上へ向かって掘り上げた。 地上へ着いたもぐらは、何やら目の前が眩しくなった。お日様の光だ。 ああ、これが光というものか・・・。

12年前

- 1 -

ほとんど見えないモグラの目にも光は真っ白に輝いていた。 僕は今、地中世界の天元突破に成功し、光の世界にいる! モグラは嬉しさでいっぱいだった。 ところが、 唐突にモグラは闇に包まれた。じめっとした狭い狭い世界。 でも、土の中では無い。モグラにもそれはわかった。 壁を難度も叩いてみた。すると、 「俺様の口の中を気安く叩くな」と、奥の方から聞こえて来た。 「口?彼方は誰?」 「ジャッカルさ」

真月乃

12年前

- 2 -

ジャッカルってなんだろう?けど、生き物の本能として喰われる恐怖を瞬間感じた。 今、僕は喰われようとしている! 「待って!!」 モグラは叫んだ。 「ほお威勢がいい」 くくっと笑うジャッカルにモグラはさらに叫んだ。 「僕を食べないで!僕はっ」 もっと光を感じてみたい、そう言おうとして遮られた。 「ほお、叫ぶ気力がまだあるか。俺様は一息に飲み込まずお前に恐怖を与えて楽しんでいるのに」

- 3 -

恐怖をわざと与え、楽しんでいる。 なんて意地悪なジャッカルだろう。 「君は僕をここから出してくれないの?」 「もちろんさ。折角捕まえた獲物をわざわざ逃がす獣が何処にいる?」 いやだ、僕はもっと光を感じたいんだ。 どうすれば出してくれるのだろうか。 ……そうだ。 「ジャッカルさん、君が僕を食べないでくれるかわりに、君の願いをひとつ聞くよ!」

のくな

12年前

- 4 -

「ほう?願いねぇ…まぁ話だけでも聞いてやるか」 地面に吐き出されたモグラ。 さっきまで潜っていたであろう地面の表面へ転げ落ちる。 柔らかかった毛はよだれでぐっしょりだ。 たいそうそれは気になるものだったが生きるか死ぬかの今、それを気にしている暇はない。 「そう、ジャッカルさんのお願い。僕、体は小さいけれど、頭は悪いわけじゃないと思うよ。願いを叶えてみせるから、だからお願い、教えて。」

tempio

12年前

- 5 -

ジャッカルはにたりと笑った。 「じゃあ光っつーのはどこにある?」 モグラは固まった。何とも返答しがたい問いである。どうせ空の上に輝くモノを指してもジャッカルは認めてくれないと思ったからだ。 「俺様はあんな眩しいのに包まれても、ブラックな心は晴れねえ。俺様は今暗闇に居る心地なんだよ。俺様の心を照らす光を求めてんのさ」 ほれ、答えを出してみろと言わんばかりにモグラをつつく。 本当に意地悪だと思った。

やつざき

12年前

- 6 -

答えられなければ、闇の中にもどらなくてはいけなくなることをモグラは残念に思った。 「光」というものがどんなものなのか知りたくて、一度でいいから手に触れてみたくて、地中を旅して地上に出た。 光の白さは地中には決してないものだった。 モグラはジャッカルの気持ちになってみようと思った。 ジャッカルが感じている暗闇の中にいる気分。それは光を味わう前の自分の姿だった。光を追い求めていた一寸先の。

aoto

11年前

- 7 -

モグラは答えた。 「僕はさっきまでずっと地中で暮らしてたんだけど、光を感じたくてやっとの思いでここまで出てきたんだ。でも地中にいる時はずっと一人ぼっちだったんだ。ジャッカルさん、本当はもっと皆と仲良くなりたいんじゃない?意地悪なんかしたくないんだよ。」 「ふん。そんなことねえよ。俺は昔からそういう生き物なのさ。」 ジャッカルは全く聞く耳を持とうとはしなかった。 しかし、モグラも引かなかった。

- 8 -

「そういう生き物なの?」 モグラは強気だった。 「モグラは土の中の生き物。そういう生き物。でもそのまんまじゃいつまでも暗い土の中」 「何が言いたい?」 「そういう生き物が、土の上に出た」 ジャッカルは何故か聞き入っていた。 「光は、『そういう生き物』から抜け出た先にあるんだと思うんだ!」 ジャッカルは静かにモグラに背を向けると、去り際に言った。 「おいお前」 「は、はいっ?」 「ありがとな」

すもがわ

11年前

- 完 -