銃声の響く時
視界がぼやけて、周りがよく見えない。音もよく聴こえない。手の先からすうっと、力や体温なんかが、外へ漏れ出すのが分かった。ゆっくり死んでいくとは、こういうことかと、ぼんやり感じた。
あの人は何処に行ったのだろうか。今すぐ追いかけたいが、もう、私にそんな力は残っていない。
さいごに、さいごに、私は
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首かかっているペンダントを握りしめる。
こうしていれば、ずっと一緒な気がした。
何もかもがなくなっていく私において、このペンダントだけが、唯一彼と私を繋ぎ止める鎖になっていたのかもしれない。
薄れていく気力の中、
ペンダントだけは離してしまわないように気をつける。
とうとう意識もなくなるかどうかの時、
コツコツと足音が聞こえてきた。
誰だか分からないが、もう、なにもかもが
遅 す ぎ た
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倒れた女に歩み寄ってもう息はないか確認しにいく。
僕はこいつを撃った。
遅れてきた硝煙の匂いが足を震わせる。
これでいいんだ。
こいつがいなくなれば由美と…。
え?
なんで君が死んでいるんだ…?
まさか、そんな…
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「嘘…だろ…」と男は何度も呟いた。
そう、彼は由美を発砲してしまったのである。
間違いなく由梨を狙ったのに…なんで…
そう、彼は元警察官だ。拳銃の扱いには慣れているからミスしたとは考えにくい。
そしてあることに気づいた。
由美の性格…そう。自分のことより他人が大切だった。銃口が由梨に向けられたのを偶然気づいていたとしたら…迷わずかばうだろう。そう…由美は由梨を守って好きな人に撃たれたのである。
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意識が無くなる寸前、君の声が聴こえた。
『由美っ…おいっ』
私の…名前を呼んでくれてるの?
良かった。最期に写真としか君と繋がらないと思った。
皮膚の感覚はもうほとんどないけど、嗅ぎ慣れた君の優しい香りと凄く安心する…腕の中。
冷たくなってく身体に、ポツリと温かい水滴が落ちる。
泣いてるの……?
泣かないで。
………………笑って?
私の意識が完全に消えた。
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『どんな理由があったって、人が人を殺していい理由なんか、ない。』
由美がよく言っていたことだった。
違う、今回は仕方がなかったんだ。
由梨は、この世にいらない人間だったんだ。
想像の中の由美が僕に問いかけてくる。
『じゃあ、私は?……君は?』
由梨は?
由美が倒れていたすぐそばで、由梨はかたかたと肩を震わせながら、地べたに座り込んでいた。
隠れていた警察官が彼女を捕まえた。
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「署までご同行願えますか。もちろん、そこのあなたもです」
警察官は震える由梨の手をつかんで、立たせるように引っ張り上げた。違う警察官が横から出てきて、僕の手に手錠をかける。
冷たくなってしまった由美と離れるのが耐えられなくて、何度も手を伸ばした。
だが、もう触ることは叶わない。
かしゃん、という手錠の音が小さく部屋に響く。
僕が最後に見たのは、幸せそうにペンダントを掴んで横たわる由美の姿だった。
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「大変でしたね。もう大丈夫ですよ」
警官が私をいたわるように声をかけた。
それでも私は俯いて両手で顔を覆ったまま動かない。
由美は、私を庇って死んでしまった。彼が、健一が殺した。
私と、由美と、健一。3人で遊んだのがもう遠い昔に思える。
彼は抵抗すること無くパトカーに乗せられ、そのまま走り去っていく。
そこでようやく私は息をついた。
顔がにやけてしまって、隠すのが大変だったのだ。
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「由美そろそろ起きなさいよね!。」
「いててて、乱暴にしないでよ。死体なのよ私。」
「はいはい、怪我は無いわね。」
「そりゃ当たってないし、それにこれも。」そう言って服を捲ると紺色の防弾チョッキが顔を覗かせた。
「健一吐くかしらね、覚醒剤の横流しの事。」
「吐くんじゃ無い死にそうな顔してたし。」
「まぁそうね。で、次は何処行くの?」
「えっと群馬県警からの依頼よ。」
「なんだまた警察なの?」
- 完 -
作品情報
銃声の響く時
#488
- リレー期間
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3年9ヶ月