星降る夜のふたりがたり

「ねぇ、先輩。もし、もしもの話ですけど」 「なんだ」 「もし、地球に隕石が降ってきて人類が滅亡しちゃったらどうします?」 「人類が滅亡したら、どうするもこうするも無いだろ。死んでるんだから」 「私たちだけ生き残ったら? なーんにもない地球で、なーんにもない私と先輩の2人きり。そしたらどうします?」 「そんなこと聞いてどうすんだ」 「別に何も。何となく聞いてみたいと思っただけです」

雪中花

7年前

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「…言っておくけど」 「はい」 「そうなったとしても、俺はお前を好きにはならないよ」 「あはは、はっきり言いますね。流石に傷つきますよ、私も」 「…分かってて聞いたんだろ?」 「知ってますよ、そんなことは。だから、何となくって言ったじゃないですか」 「なら、」 「でも、私は先輩がいいな。先輩があの人のことを好きだとしても、先輩がいい」 「…」 「はぁ。落ちないかな、隕石」

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「…あんま物騒な事言うなよ」 「はいはい。言霊ってありますもんね。…隕石落ちろ〜」 「小声で言っても聞こえてるからな」 「そりゃ聞こえてますよね。ここ私と先輩の2人きりですから」 「だからさっさとこれ終わらせて帰るぞ」 「2人で?相合傘とかしちゃいます?」 「馬鹿、方向が真逆だろうが。ガッツリ晴れてるし」 「…先輩、私の帰る方向覚えててくれたんですね」 「変なとこで感動すんなって」

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「はあ。降らないかな…」 「雨か。隕石よりかは現実的だけど」 「いえ、違います」 「?」 「星です」 「響きはロマンチックだが、たぶん隕石と同義の意味で言っているな」 「星降る一夜を先輩と過ごすなんて」 「過ごしてない、過ごしてない」 「そうなんですか?」 「そうなんです。夕方だし、何も降ってない」 「夜が待ち遠しいですね」 「降りかかるは困難か。俺の身に」

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「先輩が振られる困難があったら、私は身を持って守りますよ」 「振られるには気持ちを伝えなきゃならないからまずそれはないな。守られるくらいならやり過ごすよ」 「過ごしたいです。先輩と。あ、今、一緒に過ごしてますけどね」 「変換能力、おかしいだろ」 「私と一緒にいたら楽しいですか? 嬉しいです」 「はあ…」 「否定しないって事はいつ隕石降ってもいい感じですか?」 「話すより手を動かせ」

《靉》

6年前

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「あ。星降って来た」 「冗談だろ。願い事三回早口で言えよ」 「先輩が私の事好きになりますように先輩が私の事す」 「もう良い。長くて落っこっちまってるよ」 「私早口言葉検定三級持ってるんです」 「聞いた事ないな、その検定」 「先輩の事愛してる検定は一級合格ですけど」 「ほう。それはすごいなー」 「でも採用枠一枠だけなんですよね」 「そういうのは見込みなかったら次行くんだよ、次」

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「見込みってないですか?」 「てか、一枠あるって誰が決めたよ。そもそもない場合だってあるだろ。」 「ない場合なんて、あるんですか。」 「…あるある。」 「先輩、今なんで詰まったんですか?」 「ないとあるがごっちゃになったんだ。」 「…へー。」 「何だよ?て言うか、ほんと手動かせよ。終わんねーぞ。」 「はいはい。」 「はいは一回でいいの。」 「はーい。」 「馬鹿にしてる?」

asaya

6年前

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「ふふっ、してませんよ?」 「いや、してるだろ…。」 「してませんって〜!」 「いやいや!」 「してませんから! いいですね〜、二人っきりの教室で、くだらないやり取りを仲睦まじくするだなんて。」 「敢えてノーコメントで。」 「えー、酷いなー、今のは本気ですよ?」 「…。」 「やだなぁ、黙らないで下さいよ…」

星海

6年前

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■■■■ 「あの夜みたいね、この星空」 「ああ、忘れもしない。お前の駄弁りに散々付き合わされた」 「酷いっ。私達のラブストーリーが始まった夜でしょ、先輩♪」 「…懐かしい呼び名だ。何十年ぶりだ?」 「そこ以外スルーなの?」 「この歳で少女漫画のノリはやめろ。はあ、またお前に狂わされる」 「いいじゃない。仲良くくだらない話を出来るって」 「…そうだな」 「…今は黙らないのね」

haduki

6年前

- 完 -