俺たちのグレかた、間違ってますか?
「今日から俺は不良になった!」
優等生の堺は宣言した。楽しみにとって置いたプリンを父母に食べられ、グレる決心をしたらしい。
「で、お前のどの辺が不良なわけ?」
煙草チョコを咥えながらノンアルコール麦酒を呷る堺に尋ねる。まさかそれで喫煙・飲酒のつもりではあるまいな。
「これを見ろ!」
得意気に制服ズボンの裾を見せて来た。
「規定より3cmも長い、立派な校則違反だぜ!」
「…へぇ」としか言えない。
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そして彼は重々しく呟いた
「帰ったら家を追い出されるかもしれない。でも、俺は復讐を遂げるつもりだ」
いや誰も気づかないだろ
「そっか、がんばれよ」
めんどくさいから応援すると堺は嬉しそうに微笑んだ。
次の日、元気のない堺が教室に現れた。みんなが声をかけても全く反応が無い。
予鈴が鳴り、授業が始まる。しかし黒板の前に知らない生徒がいた。不良だ。堺は急に立ち上がり、きらきらとした瞳で転校生を見つめた。
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「見て見て!本物の不良だよ!」
さっきまでの落ち込みようはどこえやら、堺は嬉しそうにはしゃいだ。
「…堺、お前ってほんと可愛い奴だね」
「えっ何なんか言った?」
「いや別に」
その時、堺の視線に気づいた転校生はこちらへ近づいてきた。
「おい、なにこっちジロジロ見てんだよ」
「うわぁ!不良に声かけられた!」
キャッキャ喜ぶ堺。
「は?お前馬鹿にしてんの?」
「すいません!こいつ悪気は無いんです…」
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転校生の真島は、どうやら堺の理想とする不良像だったらしい。
着崩した制服、傷んだ茶髪、耳にはピアスが光っている。
「スゲー! あれが不良ファッションかー!」
目をつけられていることにも気付かず、やたらと嬉しげに呟く堺。なんだか嫌な予感がする…。
そして翌日、登校してきた堺を見てぎょっと目を見張った。
「おー、見てみてー」
耳にピアスが光っていたのだ。
「ちょ、マジで開けたのか?」
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「当たり前だろ!こんなの余裕だよ!!」
フンッと誇らしげに胸を張る堺。
しかし、のけぞったと同時に、付け方が悪かったんだろう、金色の輝きを放っていたノンホールピアスは静かに床と床の間に吸い込まれていった。
「・・・・・・・・・・・・」
何も言えない、言えるわけない。
堺のヤツが顔を真っ赤にしてこっち見てくる。
少し涙ぐんでいる気もするし・・・
ああっ、もう、どうすればいいんだよぉ!!
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さらに真島が目頭を押さえ出し、泣いてる?
「昔拾った『ぷりん』に似てんだ。堺みたいにアホでよ…ぷりんは、もう…」
雨の日か。
堺は煙草のような物をすっと手渡す。確かめるまでもなくチョコだった。立ち直りが早くて、いいと思う。
「復讐っきゃないよ!食べ物の恨みはな、マジでなあ!」
「真島のは多分プリンじゃなくて」
「おいお前も食え」
3人でチョコが回った。堺がグレるきっかけはプリンにあった訳で。
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そこから俺達3人は、チョコを咥えながら他愛もない話で盛り上がった。
気付いたのは、真島と話していて、その容姿に反して酒臭さやタバコ臭さが全く無かった事だった。
「いや〜、マジお前ら面白れーわ」
「そ、そうかな…?」
「よし!俺、決めた!」
「?」
「俺、不良辞めるわ!」
「え…ええええー!?」
驚いたのは堺だった。
「正直、こんな格好でイキるのも飽きてきた所だったから、丁度いいタイミングだわ」
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真島は教室の窓枠に両手をかけ、入道雲を眩しそうに眺めている。
「なあ、辞めんなよ。もっと不良教えてくれよ」
堺は縋るように訴えたが、振り向いた真島の目は、もう不良の鋭さを失っていた。
「俺、実は地味な眼鏡女子が好きなんだ。けど、そういう女が恋する相手は、汗だくになって部活に打ち込んでるような男子だろ?」
「…は?」
「お前ら帰宅部だよな。俺ら3人で、今から全国目指そうぜ!」
いや、なんの?
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「とりあえず、走るか」
真島の唐突な提案に、俺と堺は顔を見合わせた。
「おい真島、帰宅部の全国大会ってなんだよ!」
「競技はタイムアタックだ。終礼のチャイムと同時に、誰よりも早く校門を抜ける」
真剣な目の真島に毒気を抜かれたのか、堺は嬉しそうに腕をまくった。
「よし、俺が一番に帰ってやるぜ!」
プリンを奪われて始まった堺のグレる計画は、巡り巡って謎の全力下校へと昇華したのだった。
- 完 -
作品情報
俺たちのグレかた、間違ってますか?
#17434
- リレー期間
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11年12ヶ月