九つの星座

星の話をしよう。 祖父がそう呟いたあの日も、星が私たちに語りかけるように瞬いていました。これは、祖父から聞いた九つの星座の物語。 ♢こぐま座 祖父は特に北極星が好きでした。いつも北の空で光を放つ北極星に魅了されたそうです。そんな夜空の大スターを含むこぐま座。一年中、私たちに可愛い姿を見せてくれます。 すぐ近くを回るおおぐま座はこぐま座の母親です。 仲良し親子は、今夜も北の空に。

熊岡りり

12年前

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◇双子座 祖父も実は双子で、兄が居たそうです。二人は若い頃、船乗りをしていたのですが、戦争で兄は亡くなり、仲の良かった祖父は何度も後を追う事を考えたそうです。 でも、争いに巻き込まれ兄を亡くした双子座神話の弟がそうであった様に、祖父もその度に命を救われました。 そして双子座が船の守神セントエルモの火とも云われる様に、戦争で命を落とした祖父の兄も、故郷では、船のお守りとしてお札になっているそうです。

真月乃

12年前

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◇みなみじゅうじ座 祖父が星座のことをたくさん知っているのも、船乗りだった影響が大きいのです。今はGPSがあるので広い海の上でも自分の位置を知ることができますが、昔の船乗りは星を頼りに航海したそうです。 北半球では祖父の好きな北極星が目印として使われ、南半球ではみなみじゅうじ座が同じ役割を果たしました。日本からは位置的にほとんど見ることのできない星座ですが、いつか私も南十字星を見に行きたいです。

saøto

12年前

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◇こと座 夏の夜空に輝くこと座。中でも一番明るいのは織女星とも呼ばれるベガです。祖父はこの星を見ると決まって祖母を思い出すと言います。 船乗りだった祖父は、滅多に祖母に会えなかったそうです。祖母は美しい人だったと皆が口を揃えます。子どもが産まれたと聞き、喜び勇んで故郷に戻ると、祖母は赤ちゃん──私の父を遺して、戦争で亡くなっていたのでした。 祖父もきっとオルフェウスのように嘆き悲しんだのでしょう。

lalalacco

11年前

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◇さそり座 今まで紹介してきた星座とはまた違う……。ある女神から見れば正義のヒーローであり、ある青年からみたら、ただの暗殺者なんだ、。 赤黒く硬い甲羅に身を包み、しっぽから猛毒を分泌している、日本には生息していないらしいが……。 近所の物好きが飼ってるさそりのスコーピオンくんが逃げ出したらしい。 お前も公園の茂みとかには気をつけろと、祖父は私の頭を撫でながら、今までより声のトーンを低めた。

Mik@tam

3年前

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獅子座 獅子座は、ギリシア神話の英雄ヘルクレスの12の冒険話に出てくる怪物で、ネメアの森でヘルクレスに退治されたと言われている。 私の父は獅子座だった。父は、正義感の強い男あった。ある日、近所の子が行方不明になった。村中の人が探したが見当たらない。子供が熊に食われそうになっていた所を見つけた彼は、子どもを助けた。だが、それが帰らぬ日となった。 彼をたたえた村中の人たちは、父のことを獅子と呼んだ。

ネコ

3年前

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◇オリオン座 美しい青と赤の2つの1等星が特徴のオリオン座は、星々を見つける目印となりながら、冬の夜空に浮かんでいます。 乱暴者であったためにサソリに刺し殺された話を、祖父は祖母に話して聞かせたそうです。2つの星座の位置関係を語る横顔は、祖母の眼から見ればきっと得意げなものだったでしょう。 『月が綺麗ですね』 彼が月の女神アルテミスの恋人ともされていることも、祖父は伝えたのかもしれません。

まりも

3年前

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◇へびつかい座 再生不死の象徴である蛇をつかんでいる、へびつかいは医師の祖アスクレピウスです。彼はギリシア一の名医でしたが、死者を蘇らせるようになりました。その為、殺されてしまいました。 彼も自分自身を蘇えらせることはできませんでした。 『人間がしてはならないことがたくさんある。』それが祖父の口癖でした。でも、あのときの声はいつもと違いました。 祖父は自分の死期を悟っていたのかもしれません。

雪螢

1年前

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◇てんびん座 最後はてんびん座。パッとしない星座だけれども祖父はこの星座が1番好きでした。 祖父は、てんびん座は正義の女神アストレアが善悪を裁くために持っていたものだよと教えてくれました。善し悪しを計るてんびんに私はとてもカッコイイと思ったことを覚えています。 『この星たちにはキラキラと光る物語が詰まっているんだ。』 私は祖父の話を聞いて気がつきました。この素晴らしい物語を繋ぎたかったのだと

- 完 -