優等生の一日計画
突然ですが何の予定もない明日を特別な日に変えたいと思います。何十年か後、「人生最高の1日は?」と聞かれた時この日が浮かぶくらいに。小説特有の都合のいい展開ではなく、あくまで現実的描写と実現可能な行動力で。自分以外の重要人物は登場させません。運命の出逢いも奇跡も無いけれど、何か素敵な事を皆さんと考えたいのです。物語は早朝、自宅を出る所から始めます。もし完結した暁には皆さんも一緒に実践を是非。
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「人生最高の1日」という事は今後の人生で一切良い日があってはならない。不幸がない普通の日常ほど幸せな事は無い。つまり「人生最後の1日」だ。
「自分以外の重要人物は登場させません」という前提があるので単独行動でキーパーソンとなりえる、コンビニの店員、電車の乗客などの登場も不可。と制限されるので、山奥、海のど真ん中、北極南極とかなり絞られてしまう。
奇跡も起きない。さてどうする?
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休日の朝、めちゃくちゃ早起きをしてみた、わざわざ仕事日にセットしたことのないアラームまで鳴らして。
一日中普段しないことをしてみるつもりだ。
まずは、適当に菓子パンやペットボトル、おやつをカバンに詰め込み軽自動車に乗り込む。通勤時にはかけない静かな音楽をチョイス。
地方の良いところは車で1時間も走れば人のいない秘境…とまではいかないまでも海や山に手軽にアクセスできることだ。
4:45出発
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頑張って起きたのには当然訳がある。まだ眠っている町を見に行くんだ。
直感と好みでハンドルを切っていい。高いところを目指すんだ。軽でも獣道など、刹那楽しそうでも後が面倒な選択肢は回避だ。
朝を一人占めする。風が心地良い。いい選曲だ。日の出は6月の4時半、1月の7時がピークだけどここでは便宜上1時間後にしよう。
6時夜明け
地平線から顔を出した朝日が山を、建物を、同じ色に染めていく。贅沢な時間だ。
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スマホやカメラは使わない。ただ自分の目に焼き付ける。
贅沢なこの景色を、何年経っても思い出せるように。
なんでもなかったこの日を、自分の手で『最高の1日』にするんだ。
カバンからコーヒードリップパックを取り出す。特別な日に飲みたいと、奮発して買ったまま眠っていた贅沢品だ。
その場でお湯を沸かすのも良いが、水筒のお湯を注いでも良い。
自分の為だけに、ゆっくりと時間を使うのだ。
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スノーピークのマグカップから漂うのは、単なる焙煎香とは根本的に違う。一輪咲いた花をいっときの風が運ぶ、爽やかで透明な香りだった。
ブルーマウンテンではなく、ゲイシャである。
山の冷気と相まって、神々しい新鮮味を肌で感じとる。
丘の公園のベンチに腰掛け、未読の古典『アルジャーノンに花束を』を読む。
「最高」だと知ってるものではなく、冒険心の方を選んでいく。"最後"にするには惜しい感動に襲われる。
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主人公の状況が好転し幸せがピークに達した場面でパタンと本を閉じた。
この物語の先に続くのは緩やかな悲哀だ。それは今日という最高の日に読まなくてもいい。
そうだ、今日は「最後」の1日ではない。この先も私の暮らしは続くのだ。そう思うと少し肩が軽くなった。
別に誰と出会っても構わない。自分を強く保ち、他人をキーパーソンにしなければいい。
朝8時過ぎ
私は山を下り、目覚めたばかりの町を目指した。
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町に下りると、昨日までの見慣れた風景がほんの少し違って見えた。特別な「最後の日」にするための肩の力はもう抜けている。すれ違う人と挨拶を交わしてもいいし、ふらりと開いた定食屋で温かい朝食を食べたっていい。他人を自分の人生の「キーパーソン」に仕立て上げる必要なんて最初からなかったのだ。
日常の延長線上にある小さな冒険と、自分を大切にするという選択の積み重ね。
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さ、良いこと言ったから、パチンコでも行くかな。好きなだけ煙草を吸って、夜には浴びるように酒を飲む。女遊びを嗜み、路上で倒れ込むように眠りにつこうか。
色々とかっこいいことを述べたが、私には出来そうにない。
いつの間にやら身に付けた、いい子ちゃんの重たい鎧を今日だけは脱いでみる。「最高の一日」はきっと、最低な自分を受け入れることから始まるのかもしれない。
そう思い、私は二度目の眠りにつく。
- 完 -
作品情報
優等生の一日計画
#52604
- リレー期間
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5年5ヶ月