私、メリーさん!

ケータイに着信が入っていた。 「私メリーさん。今△△駅にいるの」 「私メリーさん。今お寺の前にいるの」 「私メリーさん。今セ○ンイレ○ンの前にいるの」 これは…俺の家に向かっている? しかし……おかしいな。 「私メリーさん。今あなたの家の前にいるの」 噂だとこの次は後ろに──。 プルルル、プルルル。 「私メリーさん、今どこにいるの?」 俺、加山。まだお寺の前に差し掛かったばかりなんだけど。

続木

9年前

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俺は無言で電話を切る。 知らなかった。こういう場合もあるのか… でもどうする? これじゃあ家に帰れない。 仕方ない。適当に理由をつけて友達の家に泊めてもらうか。 プルルル、プルルル。 思わず後ろを振り向く。 …大丈夫、メリーさんはいない。 俺は電話に出た。 「私メリーさん。今、ス○バにいるの。」 こいつ、家の近くのス○バで俺が来るのを待機してやがる…!

luc

9年前

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「あ⁈だから何!」 「ひっ…そんな、怒らないでください…」 ブチッ! 何が「ひっ」だ。お前がビビってどうなのよ。あー面倒くせー。 あ、ス○バ。──ふっ、居るわけないか。正面からは来ないのか?いや、来れないのか… プルルル、プルルル。 「私メリーさん。今、あなたの後ろにいるの」 マジか!俺、ヤバイのか?でも、振り向かなければいいんだよな。よし、完全無視決定! 「あのー、」 ブチッ!

blue

9年前

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ダッシュ! 前だけを見てひたすらダッシュ! 自分の家も通り過ぎ、何も考えず全力疾走。 ああ、朝っぱらから何やってんだろう。 昨日は久々に高校時代の友達と呑みに行って、二次会三次会と騒ぎまくって、やっと帰宅するトコだったってのに。 今日は1日気持ち良く惰眠を貪るつもりだったってのに。

宵待草

8年前

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結局、△△駅から2つ離れた駅まで走ってしまった。 駅前の自販機で水を買い、グイッと呷る。駅舎のシャッターを開ける駅員から白い視線を向けられるのを気にせず、俺は着信履歴を見た。なんと23件。その中にボイスメールがあった。 『私メリーさん。今、あなたはどこにいるの?』 「見失ったのかよ!」 履歴からして俺を見失ったのは2時間前の午前2時頃か。 ……子供(?)相手に、さすがにやり過ぎたかもしれん。

Joi

6年前

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俺はとりあえず電車に乗って帰る事にした。 もうさすがにいなくなってるだろう。 てかそもそもメリーって誰だよ。 なんで俺の電話番号知ってんだよ。 最近みんなLINEだし番号なんてほぼ教えてないぞ? 俺は色々考えているうちにオール後の疲れと電車の心地よい揺れでいつの間にか眠ってしまった。 気がつくと家の反対側まで来ていた。 「やべーやっちまった」 ふと携帯を見ると不在着信の件数にゾッとした。

沼田

2年前

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どこか他人事のように通知を見ていると、ボイスメールが2件入っていた。 「私、メリーさん。今、‪✕✕電車の4号車にいるの」 俺がいる6号車の隣の隣じゃねぇか! 「私、メリーさん。今、あなたの後ろにいるの」 …後ろ?後ろの窓に張り付いているとでもいうのか…!? 恐怖で後ろを振り返れない。 電車で1人戦慄していると着信が。 「私、メリーさん。今、やっと人違いに気づいたの」 やっぱ見失ってんじゃねぇか!!

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「タッタッタッ…ハアッ、ハアッ、わ、私メ、メリーさん。い、今ご、5号車にいるの」 こえーよ!走ってこっち向かってるのかよ! 「わ、私メリーさん、ハアッい、今6号車にいるの…」 ?こちらには息を切らせた女の子らしき音はどこにも無い。 「わ、わだしメリーざん、今8号車に…っあ゛ー、いるの」 一番端の車両?まさか… 「わ、わだしメリーざん、今気がづいて、◯◯駅にいるの…」 反対方向の電車じゃねーか!

hyper

1年前

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気が抜けて◻︎◻︎駅で降りるとまた着信。ここまでくると逆に憐れだ。 「わたし、はぁはぁ、メリーさん」 疲労困憊してる…… 「いっ、今!」 「わ、いきなり大声を出すな!」 何だっていうんだ? 少し身構えるも、電話口からは情けない声。 「もうおかねがないのぉー‼︎」 ……怪異って金使うのかよ。 うわんうわん泣くのを聞いて、笑えて来てしまった。 仕方ねぇ。 「俺、加山。今おまえ、どこにいるんだ?」

yura

1年前

- 完 -