プレゼントをもらった。 決して私の誕生日ではない。 相手も特に何処かへ旅行へいってきたという記憶はなかった。 今日とて、とりわけイベントと言った日付ではなかったはずだ。 さて、どういうことだろう。 プレゼントを開けてみようか
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それにしても凝った包装だ。 綺麗に開けるのは難しい。もともと器用な方では無いし。 このリボンはどうなっているのか。 端が見当たらない。 引きちぎろうとしたけれど、手の方が擦り切れるばかり。 ライターで焼き切ることにした。 これをくれたのは、義理の妹。 なかなかユニークな子で、奔放だ。これまでも、意図の見えない言動に驚かされたことは幾度となくあった。 うーん、開かない。 飽きてきた。
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もっと手っ取り早く開ける方法は無いものか。 箱を頭上に持ち上げて底を見てみると、何の事は無い、義妹の文字で「ここから開けてね」と書かれていた。 なあんだ… ホッとしながらそこからベリベリと包装紙を剥がす。 現れたのはシンプルな箱。 蓋をそっと持ち上げるとそこには… 一回り小さな箱が入っていた。 ご丁寧に外側と同じように包装されて…。
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私にも人並みの学習能力はあるので、すぐ箱の底を見た。 さっきと同じく「ここから開けてね」と書いてある。 包装紙を剥がして現れた箱の蓋を持ち上げると一回り小さな箱が外側と同じように包装されて入っていた。マトリョーシカのようだ。 それから、このパラグラフに書かれている事を何回か繰り返した。 そして柄の違う箱が出てきた所で終わった。 その柄は私が義妹に初めてあげたプレゼントを入れた箱の柄だった。
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…どゆ事? 何か気に障った? 箱だけ突き返された? いやいや、そんな子じゃないよね。 とりあえず、箱を開けてみよう。 義妹には家族になった記念にと、私の一番のお気に入りだったアンティークのブローチをこの箱に入れてプレゼントしたんだっけ。 パカッ え? ・・・「うえを」? …「みて」? と書かれたメモが一枚。 私は、ちょっと恐る恐る…天井を見上げ…た。 ↓ ↓ →
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……天井は普段通り。 天井の準備が終わっておらず、今開けてはいけなかった? いやいや、手渡しでプレゼントを渡しておいて、でもオチはまだ用意していません、というのは明らかにオカシイ。特に、あの義妹ならそんなミスはしないだろう。 つまり。 私は二階、すなわち居間の"うえ"にある、彼女の部屋へと向かう。 私がやっきになって開封をしている間に、何か準備をしていた、ということだろうか?
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義妹の部屋の扉を、控えめにノックする。中からの応答はなし。無理矢理開けようとしても、どうやら鍵がかかっているようで、扉はびくともしない。 ……どういうこと? そう思って、義妹の名前を呼んでみた。すると、扉の向こうから聞き慣れた彼女の声がした。 「なーに? お姉ちゃん」 「開けてよ。プレゼントのことで話があるんだけど」 私がそう言うと、義妹が部屋の中でくすくす笑った。
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「この部屋じゃないわよ」 「うそー違うの?」 「ってか、プレゼント何かわかった?」 「ぜーんぜんわからない…」 「ちゃんとうえをみた?、この家の1番うえを」 …っあ、屋根裏部屋があることをすっかり忘れていた。 屋根裏部屋への階段をかけ登った。 また、今度も箱が置いてあった…
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今度は変な包装は無い。 というか、本当にただの箱に蓋がされているだけだ。 義妹の考えは、やっぱり解らない。 不安に思いながらも、私はその箱を開けてみた。中に入っていたのは……。 ブローチ。 私があげた物ではないが、これもまたアンティーク調で……私好みだ。 手に取って見ていると、義妹がやって来た。 「やっと見つけてくれたぁ。ずっと仲良しでいようね、お姉ちゃんっ」 今日は、私に妹が出来た日だった。
- 完 -