異世界非転生
俺にはある能力が目覚めた。
その能力とは人のステータスを見ること。
俺が念じればゲームみたいにステータスが見れる。
例えば
名前 : 佐藤 蓮
年齢 : 14
職業 : 妹 中学生
みたいに。更に詳しく見れるけど、妹のプライバシーを尊重しよう。
ある日隣の席の静岡さんのステータスを見たんだ。すると…
名前 : サイレントヒル
年齢 : 15473
職業 : 魔術師
所属 : ◼︎◼︎機関
- 1 -
思わず二度見した。しかし、情報はどんどん出てくる。
性別:男
資格:剣道三段、呪術十段師範、複数の格闘技の経験あり
任務:潜入捜査
な、なんだ? このあり得ない個人情報の数々……嘘だろ!?
静岡さんみたいに控えめ清楚な乙女がまさか。
実を言うと、俺はひそかに静岡さんに恋していたんだ。
彼女のステータスを見てみたのも、それが理由だ。
もしかして、俺の能力のほうが間違っているだけなのだろうか。
- 2 -
僕は確かめずにいられなくなった。もし、間違っていたとしたら、相当恥ずかしくなるに決まっているが、このままの状態よりははるかにましに思えたのだ。
「し、静岡さん」
「ん?どうしたの?」
肩の長さで揃えた髪を揺らし、静岡さんが振り返る。柑橘系の香りがふわっと僕の鼻腔をくすぐった。
「変なこと、聞いていい?その……静岡さんって本当は魔術師だったり」
しない?
言葉は途中で止まった。
- 3 -
「魔術師だったり?…どうしたの?」
静岡さんは、ゆっくりと俺の目にぴたりと視線を注ぎ、じっと見つめている。
ああ、いきなり魔術師はなかったか…。せめて剣道から攻めるとこだったかな。
「あっいや、いいんだ、いまのは気にしないで…」
静岡さんは、まだ俺の目を見ていた。
「ねえ佐藤くん。あなた聖騎士なんだ?でも、剣道初段なのね。私が教えてあげよっか?なんなら格闘技も」
静岡さんに本気になった瞬間だった。
- 4 -
その時の彼女の野生的で、美しい瞳に僕は虜になった。はっきりそう言える。
それと同時に、あのステータスは本物だったのかと不安も襲った。
次の日から彼女との二人きりの剣道の稽古は始まった。
切り返しをするにしても彼女の振る打ち、技、一本一本に神がかった魅力を感じた。
護身術の腕前も、もはや人間なのか?と疑うぐらい滑らかで素早い動きに僕はひれ伏せられた。
- 5 -
他のクラスメイトたちのいかにも普通なステータスなんて、お粗末すぎて話にならない。目の前にいる彼女の超人的な姿に魅了されていく。
稽古がしばらく続いた日、彼女は筋がいいと僕を褒めた。
「水分補給は大事よ」
僕は静岡産のお茶をわけてもらった。
額に浮いた二つの滴。目尻が光る鋭い眼差し。
すっかり舞い上がってしまった僕は、脈絡もなく、自分のステータスのことを彼女に打ち明けてしまっていた。
- 6 -
「そうみたいね」彼女は落ち着いた声でそれだけ言った。
僕は話してはいけないことを話してしまったのかもしれない、と言ってから思った。
暫く沈黙の後、彼女が呟いた。
「もったいないね」
「え?」
「ここじゃ、あなたの能力もせいぜい他人のプライバシーをのぞき見るくらいにしか使えない。でも時と場所によっては、とても有効な能力になる」
「時と場所…?」
「そう。例えば戦場で、殺し合う相手と対峙した時とか」
- 7 -
「戦場……?」
息をのむ僕に、彼女は微かに目を細めて微笑んだ。
「冗談よ。でもね、佐藤くん。その力は大切にしなさい。私みたいな怪しい『お隣さん』を見抜けたんだから」
そう言って彼女は稽古用の竹刀を軽く振り下ろし、完璧な残心をとってみせた。その凛とした佇まいに、僕は改めて胸を打たれる。
「さあ、稽古の続きを始めましょう。聖騎士様」
彼女の潜入捜査の目的も、年齢や名前の謎も、今はまだ何もわからない。
- 8 -
——その日の夜。
静岡、いやサイレントヒルはスマホで通話をしていた。
「…はい。奴等は彼を聖騎士として転生させるつもりだった様です。その証拠に私が聖騎士呼びしても違和感を持ちませんでした。…ええ、奴等は気付いていません。我が組織にも転生機関がある事に。…彼の処遇ですか?彼は面白い能力を有しています。他人のステータスを把握する能力です。これで奴等に先んじて転生を阻止できます。…はい。それでは魔王様」
- 完 -
作品情報
異世界非転生
#17132
- リレー期間
-
12年1ヶ月