呪いのプリクラ

「プリクラに映る少女って知ってる?」 お昼ご飯を食べた後、スマホをいじってると 隣に座っていた香奈が身を乗り出して聞いてきた。 「知らないよ。何それ?」 「知らないのぉ?都市伝説で今はやってるんだよ。彼氏とプリ撮る時に彼氏が彼女に向けて、赤い文字でLOVEとか愛してるとか書くと、後ろに女の子がうつることがあるんだって。そうするとね…」 香奈は続ける。 なんか嫌な予感がした。

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「そのプリに写った二人は永遠に結ばれるんだって! ロマンチックな話でしょ〜?」 両頬に手を添えうっとりと妄想に浸る香奈。 ……あれ? てっきり怖い展開が待ち受けていると予想していた私は、思わず拍子抜けしてしまっていた。 「えっ、何その都市伝説! 超ウケるんだけど」 学校の帰り道。香奈の言っていた都市伝説を話すと、彼は興味津々といった風にその話題に食いついてきた。私の彼氏、隼人だ。

sakuragi

11年前

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隼人は目を輝かせて、 「やろうよ!それ!幸運の少女?!マジ!?」 とはしゃいだ。 幸運とか言ってないんですが。 「ウケるしそれで永遠とかチョーイイ話だし!」 イイ話は聞くだけが良いかな。 「ウケなくても全然俺はいいし、てか秘密だし」 ちょっとずつシリアルになるの止めてくれる?

mozku

11年前

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シリアルではなくシリアス、そんな単純なミスをするほど当時の私はあまり賢くなかった。最初に香奈から話を聞いた時、怖さを感じた。でも本能が告げる警告を無視して、彼氏の気のままにプリクラに行ってしまった。だから。 これは起こるべくして起きた出来事。 『白線の後ろに下がって、はいラブラブポーズ❤︎』 ゲームセンターの中にあるいたって今どきのプリクラ機でラバーズモードの音声案内に従っていた。

ゆりあ

7年前

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『撮影が完了したよ♪ラバーズデコで写真をデコってね!』 音声が流れ、私たちはプリクラ機の後ろ側に回る。 「おお、可愛く撮れてんじゃーん!」 と、隼人が嬉しそうに笑う。 私は注意深く全ての写真を観察したが、どこにも不審な点はなかった。問題は今からだ。 「赤い文字でLOVEって書けばいいんだろ?」 「そうそう、愛してるとか大好きとかでもいいらしいよ」 隼人が「オッケー」と言って書き込んだ。

kam

6年前

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やがて6枚1組の写真が受取口から出てくる。私は隼人からそれをもらった。 純粋に楽しむ隼人と、ぎこちなく笑う私の間に赤字が入っている。だが私はそれを見て絶句した。 「どうしてLQVEなの?」 隼人が自分のプリクラを覗き込み「ああ」と頷いた。 「Oの右端にVがかかっちゃったんだわ。しゃーない」 「撮り直そう」 私はプリクラ機に400円投入する。 でもなぜか、機械はお金を受けつけてくれなかった。

Joi

6年前

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「あれー?」 隼人が首を傾げる。 …そんな隼人を見ていると、何か都市伝説とかどうでもよくなった。 「…撮り直さなくてもいいか」 「えー?」 「だって私達、今十分に幸せだし」 それもそーか、と隼人が笑い、私達はプリクラ機を出た。 その時だった。 「あれ?これじゃない、都市伝説の少女が映ってるプリクラって」 隼人が、近くの電柱に貼ってあるプリクラを指差して言った。 …そのプリクラを見て、絶句した。

Piano

2年前

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「わた、し…?」 それはまさに、ついさっき隼人と撮ったプリクラそのものだった。私達の間、中央には制服の女の子が写っている。その少女の特徴的な髪のリボンに気づいた時、さっと血の気が引いていくのが分かった。 「香奈…」 「ごめんね、夏実」 プリクラの中の少女が、ニヤリと笑った。 「私がここから出る為には、代わりが必要だったの。だから、嘘ついちゃった。来てくれてありがとう」 香奈の手が、私の腕を掴んだ。

ごん

2年前

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「ん?」 隼人が足を止める。 「なんだこれ…プリクラ?」 電柱に数年前の隼人とどこか見たことのある少女が写ったプリクラが貼ってある。 「なんで俺の写ったプリクラがこんなとこにあるんだ?こんなんとった覚えないのに…気味悪。」 「隼人ー、何してるの、早く早く〜!」 向こうから彼女の香奈の声が聞こえる。 隼人はそちらに向かい歩いていった。

にぃな

2年前

- 完 -