オルガモドット最大の都市、アプルチア。国の中心地からほんの少し東に逸れた場所にある其処は、世界中からありとあらゆる技術とふしぎが集まると言われている。 僕と親友のルプアも、冒険の軸にと計画していたのだけれど、物価がとかく高いので、まずはそのお隣、スターストンで旅の疲れを癒すことにした。 ラズリスと言えば、有名なのが星祭。 空から落ちて来た星の石板と呼ばれる巨石を囲んで幸せを祈るお祭だ。

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スターストンをぐるりと巡るラズリス運河。星祭は、ここから眺めるのが美しいらしい。 「へえ。お客さん達、星祭を知らずにスターストンに来たのかい」 舟漕ぎのおじさんは、話し掛ける。 「ええ。アプルチアに向かう途中で、素敵な祭に立ち会えて幸運でした」 僕が答えるとおじさんは誇らしげに目を細める。 「だろぉ?特に運河は幸福のラズリス石のカケラが拾いやすいポイントに最も近いんだぜ?」

ゆりあ

8年前

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「だが、気をつけな。欲張りすぎると、"あいつら "に水の中へ引き込まれるからな。」 おじさんは小さな声で付け足した。 「"あいつら"………。それは、人魚か何か?」 僕もルプアも、あの冒険の最初の出来事を思い出していた。 「人魚……か。少し違うなぁ。まあ、舟から降りたら、そこら辺の女の子にでも、聞いてみな。みんなきっと嬉しそうに話してくれるぜ。」

8年前

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「ラズリス石のカケラには伝説があって、昔は氷空の剥落物とも呼ばれていたの。町を治める領主様が民衆に集めさせ、彫金を施させていたというわ。魔に魅入られる、という噂が広まったのはその後の時代だった」 女の子たちは運河の付近で夜を待っていた。星祭の煌びやかさが一望できるスポットなのだという。 「ねえ、せっかくだから、一緒にお祭りを回りましょうよ?」 「どうする?」 僕はルプアに尋ねてみた。

aoto

7年前

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「まあ、案内役があってもいい」 粋がって素っ気なく答えるふりをしているが、僕から見れば笑みがダダ漏れだ。分かりやすいやつ、と思いながら「じゃあ、そうしよう」ということに決めた。 「ところで、魔に魅入られるってどういうことなんだい」 僕の問いに、女の子の一人が物語るように答える。 「ラズリス石は、集まると幻を映し出すの。それがあんまり幸せな夢だから、幻から帰ってこなくなってしまう人もいるんだって」

みつる

7年前

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