猫のいる日常

私はするべきことをキチンとしましたよ と言う顔で見上げる家猫のマァム。 そんな顔をされてみたって、この惨状は変えようがない。 「やってくれたな……」

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目の前にいるのは3匹の仔猫。 「みゃーみゃー」と鳴いている。 お金がないからとケチって去勢手術をさせなかったことを今更後悔…。 右から黒、グレー、白というなんともいい毛色だ。 さて、どうするか?

らんき

13年前

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「仔猫なんて、捨ててやる」 俺は仔猫を、ダンボールに詰めようとした。 3匹の仔猫が、世にも可愛らしい顔で、にゃあと鳴く。 俺はこんな天使達を、 全然捨てられないぞ、どうしよう。 でもな、家計状況が変わるわけじゃないんだよ。俺は、不況時に猫を何匹も飼えるほど、高収入ではない。 面倒だが、仕方あるまい。 誰か知人にでも押し付けようか。 こんなに愛くるしい仔猫達を断ったら、人外認定してやる。

雪見灯火

12年前

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「ごめ~ん、猫大好きだけどアレルギー…」 「俺んとこアパートって知ってんだろ」 「既に6匹いるからムリ」 「丁度腹が減ってたとこ!鍋の準備して待ってる!」 ・・・お前等… それでも友達か⁉いや!人間か⁉ こんな可愛い仔猫達を路頭に迷わせて平気なのか! そもそもなんで去勢しとかない!全く! ・・・って、それは俺か…。 自己嫌悪で凹む。 「みゃーみゃー」 はうっ…か、可愛え~、い、癒される。

真月乃

12年前

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って癒されてる場合じゃない!ここで何とかしないと俺も仔猫達も飢え死にしちまう!考えろ、考えるんだ… そうだ、この天使達でネコカフェをひらくか…いや、ここじゃ狭すぎる。 この尋常じゃない可愛らしさを活かしタレント猫にするか…ダメだ、しがないサラリーマンである俺にケアしたり芸を仕込んだりする時間はない。 普通に里親を探すしかないのか…?

fusuke

12年前

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「ごめんくださーい。」 はっ! キタコレ救世主! っていっても隣の部屋に住んでるしがない女子大生だけど! 今は女神だよ!イエス! 「肉じゃが、作り過ぎちゃっ「ちょ、君さ、猫!天使の子猫!飼う気ないかな!?」 愛らしく鳴く子猫たちと、見つめ合う女子大生。 ほらほら、可愛いだろ!? 「…」 「…?」 「っみゅきゃああ!なんですかこの子たち!かあわいいい!」 よしきたあああ!

らいむ

11年前

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これは脈ありと見て事情を話すと、女子大生は無情にも首を横に振った。 「うちにはポチと亀治郎がいるので…」 「犬と亀?」 「どっちもハムスターです」 無念。さすがに猫とネズミは同居できまい。 「みゃーみゃー」 「すまん。俺じゃ養えないし、君たちやっぱり捨てるしか…」 「閃きました!」 「…え?」 「私があなたに毎日ご飯を作りますから、あなたは自分の食費をこの子たちのエサ代に使ってください!」

hayayacco

10年前

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えっ? 「私、家計やりくりするの得意なんです。家事大好きだし!お味噌汁もちゃんとダシからとるんですよ♡」 ──私のお味噌汁、毎日食べません? えっ? ちょっ、まっ……あの、それってもしかもしもしかしてささささ! 「私、自分もネコだからやっぱりほっとけなくって♡」 ネコ? 「涼子ちゃんも賛成してくれると思うし……あっ、涼子ちゃんっていうのは私の……キャ♡」 「いつまでやってんの、百合子」

まーの

10年前

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バタン。 とりあえず目の前の世界から目をそらすために戸を閉める。 おそらくこの戸の向こうで知らなくていい世界が広がっているはずだ。 俺は普通に生きたい。異世界に迷い込むようなことはまっぴらごめんだ。 しかしどうするこの仔猫。やはり捨てるしか…。 「みゃーみゃー」 はいはいご飯でちゅね〜。捨てたりしないでちゅからね〜。 今日も猫4匹が財布を薄くしていく。 …お腹空いたなぁ。

- 完 -