「これは真剣な話だ…」 「冒頭でシリアスパートとか… 頭でも腐りましたか?」 「…大事な話なんだ」 「えっ… は、はい」 「これから戦争が起きる」 「…戦争…ですか?」 「あぁ… 二つの勢力による大きな戦争だ…」 「何が理由でそんなことが…」 「考えればわかるはずだ… もうすぐあの日だろ?」 「……はっ!ま、まさか!?」 「…そうだ」 「「バレンタインデー!」」
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「なるほど……貰える派と貰えない派。言い換えればリア充と非リアの戦争。確かに、酷いことになりそうですね」 「ああ…今年の争いは例年の比ではないだろう。きっと国が三つくらい消える」 「……そんなですか?」 「お前はわかってない!!!!」 「うわっ、いきなり机を叩かないでくださいよ。ココアがこぼれます」 「わかってないんだ……お前は、非リアの気持ちが!!」 「先輩、非リアなんですか?」
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「唯一のチョコは母親からのものっ! それを食らう時ほど非リアを感じることはない!」 「一人遊園地とか、ぼっちメシとかは大丈夫なんですか?」 「わかってないな! 誰かに好意を持たれているかどうか!! これが贈り物という目に見える形になって現れるんだぞ」 「はぁ、そういうものでしょうかね〜」 「やはりリア充には理解出来ないのか……」
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「でも先輩は母親からもらえるんですよね。なら、少なくとも世界の女性分の一からは好かれてるわけじゃないですか」 「その数値言われると逆に傷つくんだがな」 「少なくとも、お母さんがくれるチョコは愛情の印ですよ」 「50のババアからもらうチョコと彼女からもらうチョコは紙と金ぐらい価値が違うんだよ..! 俺だって........命がけでぇぇぇ..! ..あなたにはわからないでしょうね..!」 「」
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「そんなにチョコが欲しいなら僕が先輩に(友)チョコあげましょうか?一つ作るのも二つ作るのも変わらないですし。もちろんグレードには差がありますけど」 「いいのか」 「お菓子作りが趣味ですし、この時期になると姉達にチョコ作り手伝わされるのもありますし、何よりなんか先輩が可哀想になってきつつあるので」 「その言葉を聞いているとなんか複雑な気持ちになってくるんだが」 「気のせいじゃないですか」
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「で、要ります?チョコ(友)」 「BF(仮)なんてタイトルのゲームあったっけな」 「5秒で決める。5・4・3……」 「ください。すんません」 「じゃあ、今から嗜好に関する質問(全150問)に答えてくださいね」 「地味に質問数多っ!」 〜しばらくお待ちください〜 「よし。それでは、2/15を楽しみにしていてください」 「え、15日?」 「14日は日曜だから、翌日なのは当然でしょう」
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「ええ。」 「わ、分かった。」 と言い、チャイムの響く教室を出て、‘偶然’そこにいた友人に聞く。 ”So,what do you make of that?”。 英語で。残念だったな、あんたが聞いてんのは知ってんだよ。 「也许他是同性恋,他想表明他爱你。」 お、意図分かってる。 «Почему ты так думаешь?»。 頼む。理解して。 کسی طرح. おい。流石に分からん。
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そんな行動を見ている女子達の冷たい視線があった。 「なに?あの二人? 下校のチャイムと共に動き出したかと思ったら、いきなり外国語で話しかけ始めたりして?なんなのよ、ほんと⁉︎」 「あれじゃない? もうじきバレンタインだからさ〜」 「えっ? もしかして、モテようとしてるわけ〜?」 「じゃ、ない〜?」 「うっそ〜。さいて〜」 「だよね〜」 「あんな低脳パフォーマンスでチョコを貰おうなんて浅はかだわ〜」
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「ついにこの日が来てしまったか」 「そんな意味深に呟いてもカッコよくないですよ」 「おう後輩。待っていた──ぞ?」 「ふふ。どうですか?似合います?姉の制服借りたんですけど」 「なっ……なんだと」 「先輩の趣味嗜好は把握済みです。こういう女子から貰いたいんですよね?」 「くっ」 「じゃあ──先輩。チョコ、先輩のために作りました。受け取ってください!」 「……この戦争、俺の勝ちだ」
- 完 -