オルガモドットの大都市・アプルチアを南へずぅっと下って行くと、砂漠を抜けた少し西、長閑な風景に出逢う。僕の住むリコタモッツァ村だ。元々は二つの集落だったのだけれど、沢山の議会を経て一つにまとまった。結束したのだ。 僕は親友のルプアと一緒に、毎日冒険の計画を練っている。 きっかけは、巡業中の〝黄金のサーカス〟に祖父が宿泊先を提供したこと。うちは大きな牧場と、小さな宿屋を運営している。
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「格好良かったよな〜。黄金サーカス」 ご機嫌で鉛筆を走らせるルプアに僕も相槌を打つ。 「うん。凄く格好良かった」 「特に……」 「「団長のアミネスさん!」」 声を揃え、顔を見合わせる。 鍛えられた肉体、ダンディな小麦肌。 「私はな、世界中隅々まで人々を笑顔にしたいんだ」 口髭を揺らして彼は笑った。 巡業中、毎日のように僕とルプアは宿屋でアミネスさんが訪れた街の話を聞かせてもらった。
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ある日、アミネスさんが祖父と宿屋のカウンターで話しているのを見かけた。彼は立派な口髭を嬉しそうに揺らし、祖父に分厚い手を差し出す。 「いやぁ、ありがとうございました。あなたのおかげで、公演は大盛況でした!」 「いえいえ、そんな」 「次の街でも伝えます。リコタモッツァ村には良い宿屋があると」 アミネスさんが行ってしまう! 僕は大慌てでルプアを呼びに行った。計画したのだ、巡業に連れて行ってもらうと。
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