昼休み戦争

『ターゲット確認しました』 『直ちに確保に向かいます』 『敵は手強いぞ、心してかかれ!!』 こうして、 僕らの戦争は始まった。 購買名物の ウルトラデラックスパンを めぐる熱き戦いの 幕開けである──

千咲

10年前

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まず行く手を阻む者は! 来る者来る者弾きかえす肉の壁。鍛え抜かれたその肉体はもはや鋼鉄も同然。校内最強の肉体派、ラグビー部。 『いきなり難敵だな』 『問題ありません』 地面を軽く蹴りつける。体は軽く、廊下の窓ガラスから見える空は蒼い。真っ白な入道雲は私の心をふわりと浮かせた。 『筋肉ダルマには地面がお似合よ』 シャツを噛みしめるラグビー部 『帰宅部の癖にー!!』 第一の壁突破

10年前

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『右にフェイント! 左にフェイント!』 『マークを絶対ハズすな!』 廊下にバッシュの擦る音。しなやかな筋肉と瞬発力。さらにパス回しとジャンプで敵を翻弄。 第二の壁、バスケットボール部 『うまくスライディングして通りぬけるんだ』 『任せて!』 ジャンプで上を意識させる。キラキラと汗が舞う。フェイント返し! 『騙し合いはコートの中でやってなさい』 キュッキュ、という音が虚しく響いた。

すくな

9年前

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『きゃっ』 加速度が上がると、つい接触事故を起こしがち。今回ぶつかったのが荷物を抱えた女子とあって、さすがに立ち止まらざるを得ない。 『大丈夫ですか』 形式上手を差し伸べるも、イエスの返事を聞いたら走り出す準備。 『あ……』 女子の視線が派手に散らばった荷物へ。原因は僕だから仕方なく拾う。 『これは!家庭科部伝統の料理本!』 しまった彼女も足止めの罠だったのだ。顔の割れてない新入りを使ったな!

ゆりあ

9年前

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『お先にな!』 その隙を狙い横を通過して行ったのは──。 『第二帰宅部ッ!?』 『道草派の裏切り者共が!』 すぐに後を追う、が。 ガバディガバディガバディガバディ 『ガバディ部か!』 近年頭角を現してきたガバディ部。その独特な動きはなかなかの難敵。第二帰宅部も攻めあぐねている。 『チッ。直帰派、協力するぞ!』 『仕方ない……か、いくぞ!』 この日、二つの帰宅部が心をひとつに協力した。

続木

9年前

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二つの帰宅部のタッグの前には、ガバディ部もなす術なく、道は開かれた。 『相変わらずやるな。道草派。』 『そっちこそ、直帰派なのにその動き…つくづく、勿体ないと思うぜ。運動部の勧誘も多いだろう?』 『関係ないさ。俺は、ただ真っ直ぐ家へ帰りたいだけだ。そっちこそ、勧誘が多いだろう?』 『部活動より、楽しいことがこの世には沢山あるんだよ。』 互いに腕を取り合う。そして、声を揃える。''まさに同志''

愛林檎

9年前

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『そこまでだ、お前らっ!』 その怒号が廊下に鳴り響く。 目の前には鬼の様な顔をした体育教師’’鬼塚’’ 右手にバット、左手に竹刀を持っていた。 『毎度毎度、廊下を走りおって今日という今日は許さん!覚悟しろ!』 あまりの迫力に足が止まる。 『くっ、これじゃあ先に進めないわ!』 『どうすればいいんだ!』 『俺達を倒したお前らがこんな所で止まるんじゃねぇ!』 『その声は!?…』

ケイ

5年前

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ジャカジャーン!パッパラッパー! 『吹奏楽部!』 軍隊のように足並みを揃えて100人規模のパレードが始まる。流れるは嵐のように激しい旋律。 『お前らにお似合いの曲だ!そのまま突き進め!』 竹刀とバッドを振り回す鬼塚はリズムに乗れず攻撃が乱れる。吹奏楽部の曲にリズムよく動ける者だけが勝者である、鬼塚の脇を抜けて購買へ… ようやく前に躍り出たその時、握っていたはずのお金がないことに気づいた。

siki

5年前

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ここまで来たのに肝心のお金がないなんて…! 絶望する俺の前に差し出されたのはコインの乗った手。 差し出したのは共に戦った直帰派のあいつだ。 「お前まさか…!」 『バカヤロウ、譲るわけじゃない。1つしか買えないからな、仕方ないから半分分けてやるよ』 こうして、目標より半分になったウルトラデラックスパンと、大きな友情を手に入れてこの日の戦いは終わった。 また次の戦いに向けて俺たちは腕を磨き続ける

Laito

5年前

- 完 -