カーブを抜けて
うんとこしょ。
どっこいしょ。
それでもカーブは抜けません。
「ねえ、このカーブいつまで続くの?」
「知らないよ。俺もそろそろ左へ行きたいと思っていたところだ」
2人を乗せた車はひたすら右へ曲がり続けるのでした。
- 1 -
右へ曲がっても曲がっても一本道。
左に曲がる道は出てきません。
そのカーブは右に曲がりながら少しずつ上に向かっているのでした。
螺旋。
2人はこの螺旋から抜け出せるのでしょうか。
- 2 -
道路脇に青年が立っていました。
「抜けないんだろう?手伝ってやる。」
返事も聞かずに後部座席に乗り込んできます。
「Тянут-потянут, вытянуть не могут.」
「おお、なんか凄そう。」
「いや、言ってみただけだ。僕に出来ることなんて、ほんとは何も無いさ。」
涼しげな顔で、青年は外を見ています。
うんとのぼって、
どっこまでものぼって、
それでもカーブは抜けません。
- 3 -
うんとこしょ。
どっこまで。
2人と青年を乗せ右曲がり。
まだまだカーブは抜けません。
すると今度は赤い服の小さな女の子が道路脇に立っていました。
「わたしもカーブを抜くのお手伝いするわ」
女の子は後部座席の青年に奥に詰めなさいよと押しやると、強引に乗り込んで来ました。
2人と青年、女の子。
4人揃って、
うんとこのぼって、
どっこまで。
それでもカーブは抜けません。
- 4 -
うんとこちょ。
どっこいちょ。
2人と青年と少女を乗せ右曲がり。
まったくカーブは抜けません。
すると今度は道の真ん中に一匹の猫が寝ていました。
「僕もカーブを抜くのをお手伝いするにゃ」
何で猫が話せるのかツッコミする間に、猫は彼女の膝の上に乗りました。彼氏はこの野郎と猫を睨みつけました。
2人と青年と少女と猫。
うんとのぼって、
どこまでのぼって、
それでもカーブを抜けません。
- 5 -
うんとこにゃ。
どっこいにゃ。
二人と青年と少女と一匹。
一向にカーブは抜けません。
走る車の前に凛々しい姿で立つのは一匹の犬。
「俺もカーブ抜くのを手伝うわん」
どうやら動物は普通に人間の言葉を話せるらしい。犬は車のボンネットの上に座った。
二人と青年と少女と二匹。
うんとのぼって、どこまでも。
まだまだカーブは抜けません。
- 6 -
うんとこくぅーん。
どっこいくぅーん。
二人と青年と少女と二匹が右肩下がり。
やっぱりカーブは抜けません。
すると今度はハムスター。
「わいもカーブ抜くん手伝ってやんよ」
もはや、人間の言葉を話す以前に、そんな言葉をどこで覚えたか気になるところ。ハムスターは少女の頭の上に乗っかった。
二人と青年と少女と三匹がギュウギュウ。
うんうんのぼって、どこまでも。
やっぱりカーブは抜けません。
- 7 -
うんとこちゅー。
どっこいちゅー。
二人と青年と少女と三匹は右寄りにぎゅうぎゅう。
それでもカーブは抜けません。
坂も急になってきたような気がします。
「私もカーブを抜けるのを手伝ってあげましょう」
パタパタと窓からはスズメが入ってきた。みんなの頭上を旋回した後、青年の肩に止まりました。
二人と青年と少女と三匹と一羽。
うーんとのぼって、どこまでも。
もう少しでカーブは抜けそうです。
- 8 -
うんとこしょ。
どっこいしょ。
みんな一緒に右からジャンプ
大竜巻を飛び出して
やっとカーブを抜けました。
けれど車は空高く舞い上がり
うんとのぼって
どこまでものぼって
螺旋銀河に辿り着いた
また次のカーブがやってきます。
螺旋の道は
遺伝子の通り道
46億年の思い出を
みんなで繋いで
その車は走り続ける
みんなで一緒にうんとこしょ
どっこいしょ
やっぱりカーブは続きます
どっこまでも
- 完 -
作品情報
カーブを抜けて
#6496
- リレー期間
-
4ヶ月